李在明(イ・ジェミョン)政権が検察改革に向けて動き出す中、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前政権で任命された沈雨廷(シム・ウジョン)検察総長が1日、辞意を表明しました。
韓国では、政権交代にともない、検察トップをはじめとする幹部人事が大きく入れ替わるのが慣例となっています。沈総長は、任期2年を全うすることなく、就任からわずか9か月での途中退任となりました。
沈総長は、尹前大統領に近いとされる人物で、大統領夫人だった金建希(キム・ゴニ)氏の高級バッグ授受疑惑について、最終的に「嫌疑なし」と判断し、捜査を終結させた責任者としても知られています。当時、野党だった「共に民主党」は、「捜査のもみ消しだ」として強く反発しました。
沈総長は、1日に大検察庁で行われた記者会見で「重い責務を下すことにした」と述べた上で、「あらかじめ結論や期限を決めたうえで改革を進めれば、かえって予期せぬ副作用を招きかねない」と語り、現政権が進める強力な検察改革に対して、懸念を示しました。
韓国では、文在寅(ムン・ジェイン)政権のもとで、検察の一部の捜査権が警察に移されるなど、すでに検察改革が始まっていました。しかしその後、検察出身の尹政権のもとで、関連する施行令が見直され、検察の直接捜査権は再び強化される形となっていました。
これに対して、李在明政権が打ち出した検察改革は、検察が長年握ってきた「捜査権」と「起訴権」のうち、捜査権をほかの機関に完全に移管するものです。
具体的には、一般的な刑事事件の捜査を警察に、汚職や経済犯罪といった重大事件の捜査を、新たに設立される「重大犯罪捜査処」にそれぞれ移し、検察は起訴のみを担う体制を目指しています。
これにより、捜査と起訴を別々の機関が担当することで、互いにけん制し合う仕組みをつくり、権限の集中を防ぐことが狙いです。
李在明政権は、前政権で後退したとされる改革を「完成」させる構えで、今後の行方に注目が集まっています。