仁川(インチョン)で60代の男が手製の銃で息子を殺害した事件が韓国社会に衝撃を与えていますが、このところ、60代以上の男性による凶悪犯罪が増えていることがわかり、注目を集めています。
警察庁によりますと、強盗や暴力などの重大な犯罪で逮捕された60代の男性容疑者は、2018年に2万6587人だったものが2022年には2万9788人と、およそ12%増加したということです。
60代以上の人口は、2015年のおよそ460万人から2022年のおよそ700万人に52%増えましたが、60代以上の受刑者数は同じ期間に、およそ2倍にまで増えています。受刑者全体に占める男性の割合はおよそ90%に上っています。
ことし、社会的な関心を集めた事件のなかにも、60代が容疑者であるケースが少なくありません。
たとえば、ことし4月にソウルの奉天洞(ポンチョンドン)のマンションで発生した放火事件では、60代の男性が騒音トラブルの末に手製の火炎放射器で隣の家に放火しています。また、5月に発生した地下鉄放火事件では、別の60代の男性が、ソウルの地下鉄5号線の車両内に火を放ち、大惨事につながるところでした。
専門家らは、こうした事件の背景には共通して「心理的な喪失感」があると指摘しています。60代の男性は、ベビーブーム世代で、かつては韓国社会の中枢を担っていましたが、退職後は社会的役割の喪失や経済的不安から無力感を抱き、それが攻撃性として現れているということです。
仁川で自身の誕生日パーティーを開いてくれた息子を手製の銃で殺害した60代の男性については、経済力を失ったことによる劣等感が、経済的に成功した元妻や、元妻と良好な関係を築いていた息子に向けられた可能性があるとみられています。