アメリカによる関税措置の発動期限が迫るなか、韓国政府は今月25日に予定されている韓米通商協議で、アメリカ産のコメと生後30か月以上の牛肉の輸入拡大を交渉対象から外す方針を明らかにしました。
政府は22日、ソウルの政府庁舎で対外経済長官会議を開き、農畜産業への影響や社会的な影響を考慮し、アメリカ産のコメと生後30か月以上の牛肉の2品目を交渉で譲歩できない「レッドライン」とすることを決めました。
これまでの韓米関税交渉では、韓国に対する関税引き下げの見返りとして、この2つの品目の輸入拡大が挙げられてきました。
しかし、韓国はすでに、アメリカ産のコメについては、一定量までは低い関税での輸入を認め、これを超える分には高い関税を課す「関税割当(TRQ)制度」を適用していて、TRQ枠内の最大配分となる32%にあたる年間13万2304トンをアメリカに割り当てています。
これをさらに拡大するには、WTO=世界貿易機関での協議や国会での批准が必要となります。
また、生後30か月以上のアメリカ産牛肉については、BSE=牛海綿状脳症への懸念から、現行法で輸入が禁じられていて、交渉対象に含めることは困難とみられています。
こうした事情から、政府は、代替案として、食料安全保障への影響が比較的小さい燃料用トウモロコシなど非食用農産品や、半導体・バッテリー素材といった戦略産業分野を交渉の切り札として活用する方針です。また、関税割当枠内での選択的開放や非関税障壁の緩和といった柔軟な通商戦略を展開することにしています。
また、政府は、今回の交渉で、先にアメリカとの交渉を妥結させた日本やインドネシアの事例も参考にしています。
インドネシアは、自動車・医薬品の輸入規制を緩和することで、アメリカからの関税率を32%から19%に引き下げることに成功しました。また、日本は、アラスカのLNG事業などへの投資を進めるとともに、アメリカ産のコメや自動車の輸入規制を見直すことで、関税率を25%から15%に下げています。
アメリカが韓国に対して予告した相互関税は、基本関税10%に加えて、国別の関税15%を上乗せした「25%」となっていて、他国のように関税率を下げることができるか今後の動きに関心が集まっています。
アメリカによる関税措置の発動まであと9日と期限が迫るなか、具潤哲(ク・ユンチョル)副総理兼企画財政部長官と産業通商資源部の呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長はアメリカを訪れ、ベッセント財務長官とグリア通商代表部(USTR)代表と「2+2通商協議」を25日に開催する予定です。