アメリカで行われたトランプ大統領との首脳会談で、合意文書が交わされなかったことに対し、大統領室は、「外交戦略上、時間を置いて進めることが不利ではないと判断したためだ」と説明しました。
姜勲植(カン・フンシク)大統領秘書室長は28日、記者団に対し、「交渉を急ぐ必要がないうえ、急いで合意文書を作成することで、トランプ大統領の要求を無理やり飲まされる可能性があった」と述べました。
専門家らも、「文書化を急ぐと、韓国に不利な条件を突きつけられるリスクがある」と慎重な姿勢を示しました。
先月30日、合意が成立した韓国とアメリカの関税交渉では、韓国への関税を予定していた25%から15%に引き下げる代わりに、韓国が3500億ドル(およそ52兆円)規模の対米投資ファンドを創設することを約束しました。このうち、1500億ドルは造船業に、2000億ドルは半導体や原子力発電、バッテリ―、バイオ分野に投資する計画です。
また、対米投資をめぐっては、5500億ドル(およそ80兆円)規模の対米投資を約束したアメリカと日本の交渉を参考にし、直接投資の代わりに融資や保証の形をとることで、負担を減らすことができたとしています。
一方、今回の韓米首脳会談では、アメリカ側から韓国駐留アメリカ軍の活動範囲を韓半島以外に広げる「戦略的柔軟性」の強化や対米投資ファンドの詳細、農畜産物のさらなる市場開放などを要求するとの見方もありましたが、実際は議論されていないということです。
アメリカが求めている「戦略的柔軟性」は、韓国駐留アメリカ軍の活動範囲を北韓への対応に限らず、台湾海峡などインド太平洋地域の戦場にも動員できるよう拡大することを柱としています。これに対し、韓国は、最先端技術を導入することで韓国駐留アメリカ軍の軍事力を強化し、物理的な移動なしで北東アジアの安全保障に貢献できる中核的な戦力として展開する方針を示しています。
専門家らは、「合意文書が交わされなかったことが、首脳会談の失敗を意味するわけではない」としたうえで、「韓国が不利な条件を飲まされることなく、交渉の余地を残した点で、戦略的な選択になり得る」と評価しました。