北韓の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が、3日に中国で行われる「抗日戦争勝利80年」の記念軍事パレードに出席するため、1日に専用列車で北京に向かう可能性があるとみられています。
複数の韓国政府関係者によりますと、金委員長は1日に平壌(ピョンヤン)を出発する可能性が高く、過去の中国訪問と同じように、中国との国境にある鴨緑江(アムノッカン)の鉄橋を経由して中国の丹東を通過し、2日に北京に到着するものとみられます。
金委員長の専用列車は「太陽号」とも呼ばれ、執務室や食堂、医療施設を備えるほか、レーダー探知を避けるステルス機能もあると伝えられています。丹東周辺では、すでに警備が強化され、観光客の立ち入り制限や鉄道の一部運行停止も行われています。
今回の軍事パレードは、第2次世界大戦における対日戦勝から80年を記念するもので、習近平国家主席やロシアのプーチン大統領も出席する予定です。冷戦後、北韓、中国、ロシアの首脳が一堂に会するのは初めてで、西側諸国に対抗する政治的な示威の場となる可能性が指摘されています。もし3か国の連携が公式に打ち出されれば、「韓国・日本・アメリカ」対「北韓・中国・ロシア」という新たな冷戦構図が鮮明になるとの見方もあります。
一方、韓国からは禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長らが代表団として派遣されますが、北韓側との接触が実現するかどうかは不透明です。北韓が最近、韓国を意図的に排除する姿勢を強めているため、可能性は低いとみられます。
専門家は、金委員長の訪中について「ウクライナ戦争を続けるロシアに兵力を派遣するなど、ロシアとの関係を深めてきた北韓が、中国との関係を修復したい思惑と、米中対立の中で北韓を再び引き寄せたい中国の利害が一致した結果だ」と分析しています。
中国と関係を復元しようとしている理由について、韓国の趙顕(チョ・ヒョン)外交部長官は、「ロシアとの関係に限界を感じたため」との見方を示しました。背景には差し迫った経済問題があり、軍事的にはロシアに接近してきたものの、その支援だけでは不十分で、最終的には中国に依存せざるを得ないということです。