北韓は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の出席のもと、10日に行われた朝鮮労働党創建80年の軍事パレードで、新型のICBM=大陸間弾道ミサイル「火星(ファソン)20」を登場させ、核戦力を誇示しました。北韓が軍事パレードを開催するのは、2023年9月以来、およそ2年ぶりです。
北韓国営の朝鮮中央テレビは11日、金委員長が見守るなか、10日夜に平壌(ピョンヤン)の金日成(キム・イルソン)広場で、雨の中行われた大規模な軍事パレードの様子を放送しました。式典には、中国の序列2位にあたる李強首相や、ロシアのプーチン大統領の側近とされるメドベージェフ国家安全保障会議副議長など、友好国の要人が出席しました。
軍事パレードでは、新型ICBM「火星20」をはじめ、極超音速ミサイルや戦術核の運用が可能な新型短距離ミサイルなど、最新の戦略兵器が一斉に登場しました。特に「火星20」が公開されたのは今回が初めてです。「火星20」は、射程がおよそ1万5000キロに達し、アメリカ本土全域を攻撃するために開発された長距離核ミサイルとみられます。朝鮮中央テレビはこれを「最強の核戦略兵器体系」と紹介しました。
韓国の軍事専門家らは、北韓が去年10月に同じく射程がおよそ1万5000キロに達する「火星19」の発射実験をしており、「火星20」では、さらなる射程の延長や、迎撃を困難にするための多弾頭化などを図った可能性があるとの見方を示しました。ただ、火星20は発射実験を経ていないことから、現時点での公開は「核保有国としてのアメリカに対する政治的なメッセージの側面が強い」と分析しています。
一方、朝鮮中央テレビは、北韓北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)郡にある第1軍団の登場場面で、「共和国南側の国境の鉄の要塞であり、最も敵対的な国家と対峙している」と説明し、韓国を敵対国として言及しました。
また、金委員長は演説を通じて、「軍は、防衛権に接近する脅威を消滅させる無敵の存在へと進化しなければならない」と述べ、核戦力の強化に改めて意欲を示しました。ただ、韓国やアメリカに対する直接的なメッセージは発しませんでした。
専門家の間では、北韓が韓国やアメリカへの挑発的な発言を控える代わりに、中国やロシアなど友好国の要人が見守る前で自らの核保有国としての「戦略的立場」を誇示することに重点を置いたとの見方が出ています。