ソウル市が国家遺産庁と協議せず、文化財周辺の開発規制を緩和した条例改正について、韓国の最高裁判所、大法院が有効だとの判断を示しました。これで、ユネスコ世界遺産に登録されている宗廟(チョンミョ)周辺の再開発事業も本格化する見通しです。
ソウル市議会は2023年10月、文化財保護条例から「文化財の特性や立地条件により、建設工事が文化財に影響を与えることが明らかな場合、許認可を再検討しなければならない」とする条項を削除しました。理由として、保全区域である100メートルの外まで過度に規制していることを挙げました。
大法院は、政府がソウル市議会を相手取って起こした「ソウル特別市文化財保護条例」改正議決の無効確認訴訟で、原告である政府の敗訴を言い渡しました。訴訟が提起されてからおよそ2年ぶりの判決となりました。
大法院は、「文化遺産法上の協議対象は、保全区域そのものを定める問題に限られる」として、ソウル市の改正が法令違反には当たらないと判断しました。
今回の判決は、中央政府の文化財保護の権限よりも、地方自治体の都市計画における自主性を広く認めたものとして評価されています。
この判決の影響で、宗廟の向かい側にある「セウン4区」の再開発も加速する見通しです。セウン4区は宗廟からおよそ180メートル離れており、保全区域外に位置しています。ソウル市はこの地区での建物の高さ制限を最大145メートルに緩和しました。
国家遺産庁は、「判決を尊重する」としうたえで、「世界遺産である宗廟の保全に支障がないよう努める」とコメントしています。
宗廟は朝鮮王朝の王と王妃の位牌を祀る霊廟で、1995年にユネスコ世界遺産に登録されました。