ユネスコ世界文化遺産に登録されている宗廟(チョンミョ)の向かい側にある再開発地域に、高さ140メートルを超える高層ビルが建設される可能性が浮上したことを受けて、学界や文化遺産関連団体から批判の声が高まっています。
ソウル市は先月30日、宗廟から180メートルほど離れた再開発地域である「セウン4区」の高さ制限を、従来の71.9メートルから最大145メートルに引き上げる再整備計画の変更を告示しました。
呉世勳(オ・セフン)ソウル市長は、この地域で長い間開発が遅れてきた「セウン商店街」を撤去し、宗廟から南山(ナムサン)にかけて、緑地と高層ビルが共存する空間を整備する構想を明らかにしています。ソウル市は、「保護区域の100メートル外であり、法的な問題はない」との立場を示しています。
しかし、韓国考古学会や韓国歴史学会など27の学会と、韓国文化遺産協会など6つの文化遺産関連協会は12日、共同声明を発表し、「ソウル市は高さ制限を引き上げる規制の緩和を直ちに撤回すべきだ」と求めました。文化遺産関連の学会と協会が一堂に会して見解を示すのは、初めてです。
声明では「宗廟は朝鮮時代における最も格式の高い祭祀建築物であり、周辺のむやみな開発を阻止してきたこれまでの努力が世界遺産登録につながった」と強調したうえで、「開発による利益だけを基準に高さを引き上げるべきではない。開発を進める過程では、事業内容の公開や専門家による評価、社会的合意が必ず先行しなければならない」と指摘しました。
宗廟(チョンミョ)は、朝鮮王室の歴代の王・王妃を祭った霊廟で、優れた建築様式と歴史性の高さから、1995年にユネスコ世界文化遺産に指定されています。
ユネスコは1995年、宗廟を世界遺産に登録した際、「世界遺産区域の景観に悪影響を及ぼす可能性のある周辺地域の高層建築の許可は行わないこと」を明記しています。