尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の妻、金建希(キム・ゴニ)氏に関する疑惑を捜査している特別検察官が、旧統一教会が与党「共に民主党」の政治家を支援したとされる疑惑について、警察庁や国家捜査本部に事件を遅れて移送したことがわかり、偏った捜査ではないかという批判が広がっています。
この問題は、旧統一教会国際本部で実務を統括してきた幹部が、ことし8月の特別検察官の捜査で、「統一教会は、最大野党『国民の力』だけでなく、与党『共に民主党』の国会議員2人にも数千万ウォンずつ支援した」と証言したことから表面化しました。
この幹部は、最近の裁判でも、「2022年の教団行事の前後に、いまの政権の閣僚4人に接触した」と主張したうえで、自身が提出した「国会議員リスト」がなぜ記録から抜け落ちたのか、特別検察官に問いただしています。
特別検察官は、押収の過程で、与野党合わせて7人の政治家の名前が記された文書も確保していましたが、実際に起訴したのは「国民の力」の議員に対する不正支援の疑いに限られました。
これに対し、「共に民主党」の関係者への聴取や強制捜査は行われませんでした。
特別検察官側は、「今回の特別検察官は、金建希氏の疑惑解明を目的とした期限付きの組織であり、旧統一教会によるほかの政治家への支援の疑惑は法律上の捜査対象に含まれない」と説明しています。
しかし、特別検察官がこれまで、金建希氏と直接関係のない件を起訴した例もあることから、説明としては不十分だという批判が出ています。
また、特別検察官が捜査対象ではないとして事件を警察などに移送することを先送りし、世論が広がったあとになってようやく警察に渡したことについても、「対応の遅れ」が指摘されています。
法律関係者の間では、政治資金法の公訴時効は7年で、2018年の支援疑惑については、ことし年末で時効となるため、処罰が困難になる可能性があるという懸念の声が出ています。