韓国国会で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による「非常戒厳」宣言に関連する「内乱事件」のみを専門に扱う特別裁判部を設置する法案が、与党「共に民主党」など与党系勢力の主導で本会議を通過しました。
国会は23日午後の本会議で、内乱専担裁判部設置法を賛成175票、反対2票、棄権2票で可決しました。最大野党「国民の力」は、採決に参加しませんでした。
この法案は、ソウル中央地方裁判所とソウル高等裁判所に、尹前大統領による「非常戒厳」宣言に関連する「内乱事件」のみを専門に扱う「内乱専担裁判部」をそれぞれ2つ以上設置することを柱としています。「非常戒厳」宣言のような、国レベルの重大事件が発生した場合、通常の刑事裁判部ではなく、専門に担当する裁判部が集中的に審理する仕組みとなっています。
与党「共に民主党」は、「非常戒厳」宣言の重大性と政治的影響を考慮すると、既存の裁判体制では公正性と迅速性を担保することが困難だと説明しています。特に、被告に尹前大統領や軍・情報機関の高官が含まれることから、外部の影響を受けない独立した裁判構造が必要だとしています。
一方、「国民の力」は、この法案について、「特定の事件を狙い撃ちにした立法だ」と指摘したうえで、「野党と前政権関係者に圧迫をかけるためのものだ」と批判しました。
この法案が本会議に上程されると、「国民の力」は強い反対意思を示すため、無制限討論、いわゆる「フィリバスター」を申請しました。張東赫(チャン・ドンヒョク)代表が発言者となり、発言時間が20時間を超える、韓国国会史上最長の「フィリバスター」記録を更新しました。
「フィリバスター」は、議員が発言時間の制限なく長時間にわたる演説を続けることで採決を阻止する議事妨害のことで、政治的メッセージを示す公開闘争の意味合いが強いとされています。