尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の妻、金建希(キム・ゴニ)氏をめぐる不正疑惑について、政府から独立して捜査してきた特別検察官チームは、およそ半年にわたる捜査を終えて最終結果を公表し、金氏が国政に不正に介入していた状況が確認されたと明らかにしました。
特別検察官チームは29日、ソウルで記者会見を開き、金氏について、「大統領の配偶者という立場を利用して、人事や選挙の公認候補の選定に関与し、高額の金品を受け取っていた」と説明しました。そのうえで、こうした一連の行為は「不正に役職を売る『売官行為』にあたり、国の公的システムを崩壊させた」と指摘しました。
特別検察官チームは、ことし7月2日の発足以降、法律で定められた180日間にわたり、金氏をめぐる16の疑惑を集中的に捜査し、28日で捜査を終了しました。捜査の対象には、株価操作疑惑や旧統一教会との金品授受疑惑、公認候補選びへの介入疑惑などが含まれています。
その中でも、旧統一教会をめぐる疑惑について、「宗教団体の金氏への要請が、選挙や、政策、人事にまで影響を及ぼしたとみられる」と説明しました。また、尹前大統領が当選した2022年の大統領選挙の際、旧統一教会のトップらが尹前大統領を支援するため最大野党「国民の力」に不法に寄付したとしたうえで、「憲法上の政教分離の原則と、民主主義の根幹である選挙の公正性を深刻に損ねた」と指摘しました。
特別検察官チームは、金建希氏や旧統一教会の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁ら20人を逮捕・起訴したほか、46人を在宅のまま起訴し、合わせて66人を裁判に付したと発表しました。また、金氏による不正の収益はおよそ14億ウォンに上ると推計しています。
特別検察官チームは、「韓国の憲政史上、前大統領夫人が拘束されたうえで起訴されるのは初めてだ」と強調し、今後は、公判維持に全力で臨むとしています。一方で、捜査しきれなかった案件については、法律に基づき警察庁の国家捜査本部に引き継ぐ方針を示しました。