韓国南西部の務安(ムアン)国際空港で、格安航空会社・済州(チェジュ)航空の旅客機が着陸に失敗し、乗客乗員181人のうち179人が死亡した事故から1年となる中、被害を拡大させたと指摘されている、電波を発信して着陸を補助する誘導装置「ローカライザー」の構造物の改修が、全国の空港で半分にもならないことが分かりました。
事故は去年12月29日、バンコク発の済州航空機が務安空港に着陸する際、不具合のため胴体着陸を試みたものの、滑走路上で停止できず、ローカライザーを固定するための硬いコンクリート製の構造物に衝突して炎上したものです。
事故のあと政府は、ローカライザーの構造が原因の一つだったとして、全国7つの空港で施設を改修し、ことし中に完了させる方針を示していました。しかし、29日までに工事が終わったのは光州(クァンジュ)空港と浦項慶州(ポハン・キョンジュ)空港の2か所だけで、麗水(ヨス)空港は31日に完成予定となっています。
務安空港では、遺族が真相究明を求めて現地にとどまっていることなどから、設備がそのまま残されているということです。済州空港では、強風や海霧の影響で工事ができる時期が限られ、着工は来年8月以降になる見通しです。また、金海(キムヘ)空港と泗川(サチョン)空港では、改修対象となる装置が2基あり、同時に撤去すると安全性に影響が出るおそれがあるとして、1基ずつ順番に工事を進めているため、作業が遅れているとしています。
一方、政府が事故後に導入を表明した、滑走路をオーバーランした航空機の衝撃を吸収して安全に停止させるための特殊な素材で作られた減速装置「EMAS」と呼ばれるシステムについては、現在も基本計画の段階にとどまっており、海外メーカーへの発注手続きなどを理由に、2028年の導入を目標としていると説明しています。
政府は、空港ごとの構造上の制約や現場の事情など、やむを得ない要因があるとしていますが、航空の安全に直結する設備であるとして、より迅速な対応が必要だという指摘も出ています。