出国禁止命令が出されている元国防部長官の李鐘燮(イ・ジョンソプ)氏が、今週初めにオーストラリア大使に任命されたことで、近く赴任のため出国するものとみられ、そのタイミングと是非について、批判が高まっています。
李鐘燮(イ・ジョンソプ)氏は、去年、国防部長官だった際、水害における捜索・救出活動にあたった海兵隊員が殉職した件に関して、当局による捜査に介入したとして、出国禁止命令を受けていました。
この事故をめぐっては、ライフジャケットを着用していない海兵隊員に捜索を行わせた責任について、権力者の不正を捜査する「高位公職者犯罪捜査処」と呼ばれる独立したチームが捜査を行っています。
当時、国防部長官だった李氏は、警察に送られた海兵隊捜査団の捜査記録を回収するよう指示したとして、事故から2か月たった去年9月に、職権乱用の容疑で捜査チームに告発されました。
翌10月に、野党が李氏を弾劾訴追する構えを見せると、李氏は自ら国防部長官を辞任しました。
捜査チームはことし1月、李氏に対して出国禁止措置を取りました。
李氏に対する疑いが晴れていないなか、李氏は今月4日にオーストラリア大使に任命され、物議を醸しました。
その3日後、捜査チームは、李氏を職権乱用の容疑者として4時間にわたって取り調べました。
取り調べの具体的な内容や結果は、明らかになっていません。
李氏の今後の動向について、法務部の朴成在(パク・ソンジェ)長官は、8日の朝、出国禁止命令が出ていても、大使としての任務を遂行するために出国することは問題ないという考えを示しました。
一方、8日の午後の段階で、法務部は、出国禁止命令の解除については、まだ検討中だとしています。
李氏をオーストラリア大使に任命した事自体にも批判が集まるなか、大統領室は、「人事検証のプロセスにおいて、李氏に出国禁止措置が取られていることは認知していなかった」と説明しています。
最大野党「共に民主党」は、「大統領室が認知していないはずはない。知っていながら大使として出国させるのは、大統領自身がこの事件に圧力をかけた張本人であることを認めるものだ」と強く批判しています。