ドイツ滞在中に北韓に入り、そのまま戻れなくなっている韓国出身の申淑子(シン・スクジャ)さんが、肝炎を患い死亡していたと北韓が国連に通知したと、人権団体のICNK=北韓反人道犯罪撤廃国際連帯が8日、ソウルで行った記者会見で明らかにしました。
それによりますと、ICNKは去年11月に国連の人権高等弁務官事務所を通じて国連のWGAD=任意的拘禁に関する実務グループに申淑子さんと2人の娘の救出を要請しており、実務グループはこれを受けて今年3月に北韓に質疑書を送り、北韓当局から先月27日に公式回答を受け取ったということです。
北韓当局は、国連に送った書簡で、「申淑子さんは、肝炎を患い死亡していた」としたうえで、1986年に北韓を脱出して韓国に戻り、妻と娘の救出活動を続けている申淑子さんの夫の呉吉男(オ・ギルナム)さんについて、「家族を捨て2人の娘の母親を死に追いやったため、2人の娘は呉吉男さんを父親と思っていない。2人は、これ以上自分たちを苦しめないでほしいと話している」と主張しました。
これに対し、呉吉男さんは、「典型的なうそだ」としており、ICNKは、北韓当局に申淑子さんがいつどこで死亡したのかなど具体的な情報を求めるとしています
申淑子さんは、1960年代に看護師としてドイツに渡って留学中の韓国人男性と結婚し、娘2人との4人家族で暮らしていましたが、1985年に北韓に誘い出され家族全員で北韓に渡りました。
その後、家族は人質として北韓に残され、スパイ教育を受けたオ・ギルナムさんだけが再びドイツに戻りましたが、1992年になってオ・ギルナムさんは、韓国に自首して帰ってきています。
北韓に残された妻のシン・スクジャさんらは、政治犯収容所に送られたものとみられており、韓国では送還を求める運動が起きています。