韓国文化シリーズ第11回の今日は、“仙人”というテーマで韓国文化を探っていきたいと思います。
昔から、東洋の人々は、老いを超越した不老長寿を夢見ていました。長生きし、風流を楽しみながら人生を送ることを願っていたということです。俗世から離れ、精神を磨き、ある境地に至るとそういった望み通りの生き方が適うと信じられてきました。韓国では、こうした不老長寿を手にした仙人のことを、神という字に仙人の仙という字を当てて、神仙と呼びます。現在に至るまで、この神仙、つまり仙人の境地が歌われた歌や絵なども数多く残されています。今日はまず、こうした仙人を歌ったサソルジルムシジョをご紹介していきたいと思います。サソルジルムシジョは、旋律が緻密だという意味のサソル、最初の部分を高い声で叫ぶというという意味のジルムという言葉が合わさってできた言葉になっています。
中国では、紀元前5世紀以前から、仙人に対する人々の関心が見られたということです。けれど当初の仙人は、体の半分が人間、そして残りの半分が動物の形をしている奇妙な姿だったといい、これは、東海地域の理想郷に住む不死の超人の姿であったといも言われています。中国の初代皇帝である、チンシファンは、こうした仙人に関する話を聞き、自らも不老不死を得るために、血眼になりながら、薬を捜し求めたといいます。けれど、当時でも、仙人になるためには、生まれた時から一定の素質があり、さらに仙人の住んでいる山に入り、チェサを行わなくてはならないものだと信じられていました。こうして数百年の月日が流れ、仙人に対するイメージは次第に人間の領域に近づいてきたということです。これに伴い、普通の人でも特別な修行をすれば仙人になれると信じられるようになり、仙人になるために身につけなくてはならない、様々な術なども語られるようになりました。もちろん、最近の科学の進歩からみれば、取るに足らない話だと捉えられると思います。けれど、西洋において、錬金術が科学を発展させたという側面から見ると、こうした仙人の道も、人間の体と自然の調和を理解するための、ひとつの方法だと言えるかもしれません。昔の人々が描いた仙人の絵には、いくつかの共通点があるのですが、その中のひとつに、センファンという楽器を演奏する姿があります。
朝鮮時代の画家であるキム・ホンド(金弘道)という人物は、仙人の絵を多数、残しているのですが、その中に、松の下で笙を吹くという漢字を当てるソンハチュィセン図(松下吹笙圖)という作品があります。この作品はそのタイトルの通り、大きな松の木の下に、仙人が座ってセンファンを吹いている姿を描いています。この絵のように、仙人はセンファンや笛、琵琶などの楽器を好んだといい、また鶴に乗って空を飛び回っていたという話も伝えられています。そして、仙人の長寿の秘訣は不老草(ふろうそう)や西王母(せいおうぼ)の桃などを食べることだったということです。実際、この西王母の桃をこっそり盗んで食べたという、いたずらな東方朔(トン・バンソク)という仙人は、18万年の命を授かることになったという逸話も残っているんですよ。この他にも、人々の寿命を司る南極老人という仙人や、男女の縁を司る月下老人という仙人などが、広く知られています。また、韓国では、民族の起源とされている檀君や、新羅時代の学者、チェ・チウォンといった人物も仙人になったといわれているんですよ。
♬ サソルジルムシジョ‘ハクタゴ、チョブルゴ’
♬ 水龍吟
♬ 天の川を見ていた日