韓国文化シリーズ第39回の今日は、“鷹狩り”というテーマで韓国文化を探っていきたいと思います。
韓国のことわざの中に、‘꿩 대신 닭’(雉の代わりに鶏)というものがあります。また、これと同様に‘이가 없으면 잇몸으로’(歯がなければ歯茎で)といったことわざもあります。こうしたことわざは、元々必要とするものがない時、他のもので代替することを表す言葉です。歯が重要なのはわかりますが、鳥の雉を、昔の人はいったい、どのような時に必要としたのでしょうか。実は、トッククというお餅のスープを作る際に、現在では牛肉を使用しますが、昔は雉の肉を入れたといいます。農耕社会において牛は、農作業を行うのに不可欠な動物であったため、当時、牛肉を食するというのはなかなか難しかったのです。雉は味もよく、また天からの便りを伝える使者と考えられるほど、縁起のよい鳥とされてきました。新年を迎えて、雉を通して天の気運を頂こうという思いが強かったのでしょう。けれど、雉を捕まえるのも、そう簡単ではないため、雉の代わりに鶏を使おう、ということになったというのです。こうした風習から、旧正月を目前にした今の時期、寒さを省みず雉を捕まえるため、山に入る人たちが大勢いたそうです。こうした猟師たちが使った手法が鷹を使ったものだったのです。
一曲目にお聞き頂いたトゥリタリョンという曲のカトゥリとは、雉のメスを表す言葉で、様々な色の羽が美しいオスはチャンキというんですよ。
鷹を利用して雉を捕まえることを、雉狩りではなく、鷹狩りというのも面白い点だと思いませんか。まだ飛ぶこともできない、幼い鷹を捕まえてきて手なずけるのですが、鷹の品種としては、オオタカや、ハヤブサがよいとされていたそうです。オオタカはスピードが速く、獲物を見つけると急降下して捕まえます。哺乳類によくある犬歯のようなするどいくちばしで獲物を一撃し、即死させると言われています。また、ハヤブサは鋭い爪で獲物ののど笛を襲い窒息させたり、くちばしで胸元を突き刺したりするんだそうです。陸地の動物、虎と比較されるほど強い鳥で、空の帝王ともいわれています。まだ羽が抜け変わる前の幼いハヤブサをボラメというのですが、これは韓国空軍のシンボルとしても採用されているんだそうですよ。狩をするために手なずけた鷹をスジニというのですが、最初の1年ほどはチョジニ、2年過ぎるとチェジニ、3年ほど経つとサムジニという風に呼び方も変わっていきました。この中でも、狩には、勇猛無双ですばやい動きのチョジニが 最も適していると言います。猟師が“ウーウー”という音を出しながら、森の木を揺さぶると、隠れていた雉がどこからともなく飛び出してきます。このときを逃さず、鷹の綱を解くと、鷹が雉をめがけて飛んでいくのです。
このように狩に使われた鷹の尾は立派に飾りつけられていたのですが、これをペジッチェと呼んだそうです。この飾りには、鷹の飼い主の名前が書かれたシチミというものと、鈴が付けられていました。雉を捕まえた鷹が、獲物の肉を引き裂く際に、この鈴が鳴るため、もし鷹を見失った場合でも、この音で鷹の居場所を知ることができたのです。韓国では古くから鷹狩りが楽しまれてきたといいます。三国時代、百済のポプ王は、仏教の教えを崇拝し、殺傷を禁止したのですが、この際、民間で狩猟用に飼われていた鷹を全て解放するようにと命じたという記録も残っています。一方で高麗時代には、鷹を訓練させ、狩を専門に受け持つ“ウンバン”という官庁が作られたということです。現在は鷹狩りを楽しむ人は少なくなりましたが、その伝統は今でも受け継がれています。2010年には、モンゴル、スペイン、アラブ首長国連邦など、11カ国が共同で、ユネスコ人類の無形遺産に登録されています。
♬ カトゥリタリョン
♬ ナムォンサンソン(南原山城)
♬ Flying bird