韓国文化シリーズ第54回の今日は、めでたい鳥とされる「鳳凰、ボンファン」というテーマで国楽の世界へ、みなさんをご案内いたします。
ある雨上がりの夜中、ろうそくの灯りをともして部屋の中に座っていると、窓の向こうに人影が映ります。嬉しいあまり急いで出てみると、あおぎりの葉っぱが風に揺れていたのです。ソンビは、「鳳凰が来てたのか」と自らを慰めます。優れた学識と人柄まで備えていた昔のソンビは、よく庭にキリの木を植えていたそうです。娘の嫁入りの際のたんすを作ってあげるためでもありますが、縁起の良い鳥とされた鳳凰がキリの木にだけ巣をつくるとされていたからでもあるのです。荀子(じゅんし)の哀公(あいこう)編には、生を好んで殺を忌み嫌う政治をする王のもとには鳳凰が留まる、という内容もあるそうです。このお話からも分かるように、庭にキリの木を植えることは、善良な王が治める平和な世の中を切に待ち望んでいた念願でもあったのです。
鳳凰は、雄と雌の呼び方が異なります。雄が鳳、雌が凰、合わせて鳳凰と言います。その見かけは、鶏の頭にツバメの口ばし、蛇の首と龍の体、キリンの羽と魚のしっぽを持っていたと言います。ここで言うキリンとは、野原に住む首の長いキリンではなく、鳳凰のように縁起が良いとされる想像の中の動物だそうです。このような外見はそれぞれに意味があって、胸は慈しみを意味する「仁」、羽は理にかなうという意味の「義」、背中は敬意を表す「礼」、頭は恵みの「徳」、そして腹は信頼の「信」を表します。
鳳凰は群れになって留まることも、粟(あわ)などをついばむことも、決してありませんでした。竹の実のみを食物として、生きている虫や草を害さないのも神聖な鳥の特徴です。乱れた姿で飛んだり、人が張っておいた網に引っ掛かることもないそうです。また、鳴き声は、まるで楽器の音色のようだそうですが、韓国固有の管楽器、センファン(笙簧)の音色が鳳凰の鳴き声と似ていると言われます。
鳳凰は縁起の良い鳥と言われただけに、貴族の品物などにもよく描かれていたようです。王族の服や布団、枕だけでなく、鳳凰の形を掘った簪(かんざし)は、王妃や姫が使っていた最高の贅沢品でもありました。また、鳳凰の面影は韓国の音楽においても、センファンだけでなく色々なところに残っています。「鳳簫(ボンソ)」という楽器はパンパイプ型の楽器ですが、長さが異なる竹管を平らに並べて木の枠に差し込んだ形が鳳凰の羽に似ているということで、この鳳という漢字を当てて「鳳簫」と呼ばれるようになったそうです。また、朝鮮王朝の最初の頃に作られた歌の中には、朝鮮の文物制度を称えて、王家の平和を祈願した「鳳凰吟(ボンファンウン)」、鳳凰の音という歌もありました。この他にも、世宗大王(セジョンダイオウ)は訓民正音(クンミンセイオン)、つまりハングルをつくった後、王朝を称える内容の「龍飛御天歌(ヨンビオチョンカ)」という歌を作りましたが、その歌詞に合わせて作った音楽と踊りにも鳳凰の鳳という文字を当てて、これを「鳳来儀(ボンレウィ)」と呼びました。このように鳳凰は、韓国の文化や音楽など、様々なところで身近にあった鳥だったようです。
♬ オンラク(言楽)
♬ ソトンヨ
♬ ウンハスワボンファンセ(天の川と鳳凰)