朝鮮時代の有名な画家に、シン・ユンボク先生という方がいます。今日は、彼の作品の中に登場する音楽のお話を中心にお伝えいたします。センファンの演奏で「バルザウク、足跡」、 二つの音を繰り返して演奏する「ヤンチョンドドゥリ」、そして、竹の風流という意味の「テプンリュ」までをお楽しみください。
朝鮮時代の天才画家と呼ばれたキム・ホンド先生は、主に庶民の生活を描いた作品を残しています。一方、シン・ユンボク先生は、上流階層の風流や男女の愛情を素材にした作品が多いです。彼の作品には妓女がよく登場します。キム・ホンド先生と比べて華やかな色彩を使っているようです。妓女と風流があれば、歌も欠かせません。今日は、シン・ユンボク先生の作品のお話をお伝えいたします。まず、最初の作品は、「蓮池の女性」です。庭の池には蓮の花が咲いていて、一人の女性がそれを見つめています。長いキセルと楽器センファンを持って座っています。もともとは妓女であった女性ではないかと思われます。年をとって引退し、過ぎし歳月を未練がましく思っているように見えます。それでは、まず、センファンの演奏をお聞きいただきましょう。足跡という意味の、「バルザウク」という曲です。
センファンという楽器は、よく鳳凰に例えられます。鳳凰が羽をたたんでいる姿と似ているそうです。その音色は鳳凰の鳴き声に例えられ、鳳凰の音ともいいます。キム・ホンド先生は、センファンを神仙と一緒に描きました。でも、シン・ユンボク先生は、妓女が演奏する楽器として描いたようです。川に船を浮かばせて風流を楽しむことを指す「舟遊清江(ジュユチョンカン)」という作品でも同じです。妓女がセンファンを演奏し、男の子は横笛テグムを吹いているんです。また、花がきれいに咲いた春の庭園で風流を楽しむ様子を描いたものもあります。「賞春野興(サンチュンヤフン)」という作品です。身分の高そうに見える二人の男性が主人公です。彩り鮮やかな丘の上に、敷物を敷いて座っています。真ん中には妓女二人が、向かい側には楽器を演奏する者がいます。コムンゴ、テグム、ヘグムなどを演奏していますが、人々はコムンゴの方を見ています。コムンゴの演奏が素晴らしかったからか、または、独奏の場面なのかもしれません。演奏が終わると、二人は詩を作ったり絵を描いたりしたのでしょう。この日の記憶を記録しておくのです。次は、韓国の琴コムンゴ、横笛テグム、弦楽器ヘグムの演奏をお聞きいただきます。二つの音を繰り返して演奏するという意味の「ヤンチョンドドゥリ」です。
シン・ユンボク先生は、身分の高くないヤンバンや妓女などに注目した作品を多く描いています。それらの作品には、愛情がたっぷりとこもっています。もっとも印象深い作品といえば、「サンコムテム」をあげられると思います。向かい合った二人の踊り子が、長い剣を持って踊る舞踊という意味です。踊りを見物するソンビや妓女、そして演奏する者の姿もあります。派手な服装の踊り子が特に印象的です。最後の曲は、竹の風流という意味の「テプンリュ」です。竹で作った管楽器を中心に演奏する曲です。踊り子の姿を想像しながらお聞きになってみてください。