王様が宮廷の外を移動するとき演奏した音楽があります。「大吹打(テチィタ)」という曲です。軍隊が移動するときも演奏したというので、行進曲といえます。この曲名の由来ですが、「吹打(チィタ)」というのは、もともと、吹く、叩く、という意味です。つまり、口で吹く管楽器と細長いもので叩く打楽器で演奏する音楽という意味です。行進曲では、カヤグムやコムンゴのような弦楽器は演奏するのが大変です。なので、移動に便利な管楽器と打楽器が主に使われたのです。それを、そのまま曲名にしたのが、「吹打」です。「吹打」にも色々な曲がありますが、中でも、「大吹打」というと、代表的な曲という意味になります。「大吹打」は、大きなサザエの殻で作った螺角(ナガッ)という管楽器で演奏します。ここに、リズムを演奏する太平簫(テピョンソ)という楽器が加わると、ようやく華やかな音楽の完成です。それでは、今日はまず、「大吹打」という曲をお楽しみいただきます。国立国楽院の演奏でお楽しみください。
「大吹打」という曲でした。韓国の伝統的な管楽器は、ほとんど竹で作られています。でも、太平簫は、固いナツメの木やヤナギの木で管を作り、多年草の葦を薄く削ったものを口にはさんで音を出します。反対側には、金属をはさんで、音が遠くまで広がるようにします。韓国の管楽器の中では音が最も大きく雄々しい感じを与えます。そのため、主に屋外で演奏する楽器です。宮中で重要な音楽を演奏するとき、太平簫が加わると、強大で雄々しい感じを与えます。太平簫のテピョンという字は、世の中が平和な様子を意味する「天下太平」の太平という文字を使います。つまり、太平簫には、国が安定した平和な世の中を望む気持ちが込められているんです。農村で演奏する音楽でも、太平簫は重要な役割をします。中でも、「ヌンゲ、능게」という曲は、代表的な太平簫の演奏曲です。曲名の「ヌンゲ」という言葉の意味は、明らかな解釈はないようです。この曲を、イ・センカン先生の太平簫の演奏でお楽しみください。
太平簫の演奏で、「ヌンゲ、능게」という曲でした。太平簫は、色んな名称で呼ばれています。モンゴルから伝わった管楽器といわれますが、日本では嗩吶と呼ばれ、中国ではソーナーなどと呼ばれます。これを韓国では太平簫と名付けたのです。太平簫は、高麗時代の終わりにモンゴルから伝わったそうですが、もともとは西アジア地域で初めて作られた楽器だそうです。シルクロードを通じて四方に伝わったのです。今日の最後は、アン・ウンキョンさんの太平簫の演奏をお楽しみいただきます。「あなたが踊るので私も踊る、너가 춤을 추니 나도 춤을 춘다」という曲をお楽しみください。
「あなたが踊るので私も踊る、너가 춤을 추니 나도 춤을 춘다」という曲でした。インドでは、お葬式で、太平簫に似た楽器を演奏することがあるそうです。どの国でも、楽器の役割は似ているような気がします。この世の暮らしを終えてあの世に行く人に対し、その旅立ちが平和であるように祈る心が込められているのでしょう。