赤ちゃんが初めて歩き出すとき、その足取りを見守る家族は、まるで奇跡でも起こったかのように拍手を送ります。客観的に見ると上手とは言えないかもしれませんが、歩き出したことへの励ましと、これからもっと上手になるという応援の気持ちです。このようなことを、韓国語では、「チュオジュダ」と言います。現代の韓国語ではあまり使われなくなった単語ですが、大げさに褒めるという意味です。韓国の伝統芸能パンソリにも、この単語から由来した言葉があるんです。パンソリで、太鼓を叩く人や観客が合いの手を入れることを、チュイムセと言うんです。おおげさに褒めるという意味の、チュオジュダから由来しています。自然に出る感嘆の声もあれば、歌い手が疲れているとき励ましの意味で大きな声を出すこともあります。このような応援が力になって、何時間もかけて一つの物語を歌い切るのです。今日の最初は、パンソリ「春香歌(チュニャンガ)」の中から、南原(ナムウォン)という地域に新しい官吏が赴任する様子を描いた場面です。チェ・スンヒさんの歌と共に、太鼓のキム・ミョンファンさんのチュイムセもお聞きになってみてください。新任官吏の迎え入れという意味の、「新任赴任(シンヨンマジ)」という曲です。
韓国で暮らす外国人によると、韓国人は日常の会話でもチュイムセをよく使うと言います。相手が話すとき、共感を示すのです。外国の方からすると、自分のお話に集中してくれて、気分が良いとのことです。パンソリで、観客がチュイムセを入れるのは簡単ではありません。最近は、パンソリの公演が始まる前に、観客に対し、チュイムセを入れる方法とそのタイミングを教えることもあるそうです。そんなアイディアを、マンウォルプロジェクトが歌で表現しました。先ほどの曲と同じ場面を、モダンな感覚でアレンジした曲です。それでは、マンウォルプロジェクトの歌で、「新任赴任」という曲をお楽しみください。
次の曲は、目が不自由な父のために自分を犠牲にした親孝行の娘のお話、パンソリ「沈清歌(シムチョンガ)」の中から、シムチョンが父と別れを告げる場面です。この場面は、シムチョンが海に向かって出発していくという意味の一節から、「ポンピジュンニュ」という題目になりました。故郷を去り、舟に乗って海に向かうシムチョンの目には、すべての風景が美しく映りました。そのようにして数日が過ぎ、シムチョンを乗せた舟は、インダンスに到着しました。インダンスは、シムチョンがいけにえとして身を投じる場所です。天気が荒れてきたので、人々は慌てて海の神に儀式を捧げ、シムチョンに早く飛び込むよう迫ります。今日の最後は、この場面の歌です。最初は静かに、そして徐々にスピード感のある展開に変わっていく曲です。パンソリは太鼓に合わせて歌うのが一般的ですが、今日は、KBS国楽管弦楽団の演奏でお楽しみいただきます。それでは、作曲家キム・ヒジョさんが編曲した「ポンピジュンニュ」という曲を、アン・スクソンさんの歌でお届けします。