「チェ・スンシルゲート」の重要人物とされる人々の多くが改名をした経験を持つことから、「改名」にスポットが当たっています。
疑惑の中心人物であるチェ・スンシルさんは2014年、離婚訴訟を機に「ソウォン」という名前に改名しました。また、スンシルさんの娘である「チョン・ユラ」さんは、高校時代までは「ユヨン」という名前でした。ほかにもスンシルさんの一族のなかでは、めいである「チャン・シホ」さんも「シホ」は通名で本名は「ユジン」であると知られており、亡くなった父親の「チェ・テミン」さんにいたっては名前が7つあったと知られています。
韓国では、改名が簡単に行われる傾向にあります。家族関係登録をしてある地域を管轄する家庭法院(家庭裁判所に相当)に申請し、裁判所で許可されたら登録名のうちファーストネームが変更されます。以前は「改名による社会的混乱が憂慮される」という理由で許可されないことも多くありましたが、2005年に手続きが簡素化されたのとともに大法院(最高裁判所)が「憲法上の個人の人格権と幸福追求権を尊重し、犯罪(犯罪を行おうとする、罪の隠すなど)に係る改名でない限りは原則申請を認める」との見解を発表。これにより、2004年には4万6,000件だった改名申請が07年には12万4,000件に急増しました。現在も申請は増えており、去年は15万7,000人が改名を希望しています。また、大法院の見解にしたがって許可も簡単に下りるようになったため、2000年に75%だった申請通過率も、2010年には95%にアップ。個人の名前は「個人が任意に扱えるもの」という考えが定着しました。また、1度改名した後も、2年以上経てば回数の制限なく申請できることになっています。
韓国の人々が改名を希望する理由は「就職がうまくいかない」「結婚がうまくいかない」といった現実に対する不満を、名前を変える(運勢を変える)ことで打破しようというのが一番多く、そのほか「古くさい名前である」「発音がよくない(よくない単語と同音)」「漢字が難しい」などがありました。しかし、チェ・スンシルをはじめとする一族の場合、犯罪歴を隠すなど都合の悪い事柄を隠ぺいするために改名を繰り返していたのではないかとの疑いももたれており、今後究明が進められるものとみられています。