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文化

映画「82年生まれ、キム・ジヨン」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2020-01-03

玄海灘に立つ虹

映画「82年生まれ、キム・ジヨン」、韓国では10月公開、日本でも今年(2020年)公開予定。韓国では350万人以上の観客動員。


まず、小説の話。私自身、1982年生まれ。本屋に行くといつもベストセラーの棚にあって、気になって読んだ。「フェミニズムの本」とも言われているが、わりと淡々と、1982年に生まれた主人公キム・ジヨンが家庭や社会で経験してきたことが書かれていた。正直、日本で生まれ育った私の世代とはちょっとギャップがあるかな、と。日本の方では私より10歳くらい上の人が「すごい共感した」というのをよく聞く。


韓国では2016年に出て、100万部以上売れたベストセラー。2018年には韓国内で#Metoo運動が吹き荒れた時にも話題になった。日本では昨年12月に翻訳出版、韓国の小説としては初めてヒットというヒット。おかげで映画も注目されていて、私にも関連の記事の依頼や講演の依頼も。


映画は、チョン・ユミ、コン・ユ主演。主人公ジヨンをチョン・ユミが、ジヨンの夫をコン・ユが演じた。二人は「トガニ」「新感染(釜山行)」でも共演。制作報告会でも、息ぴったりの様子。本ではあまり存在感のなかった夫。映画ではかなりの存在感。欠点はコン・ユがかっこよすぎるし、優しそうなこと。その分、ジヨンに同情できない…


むしろ、コン・ユ演じる夫や、ジヨンの母に共感して泣ける映画だった。ジヨン自身は、幼い時からの家庭内での弟との差別、職場での昇進の男女格差、出産育児で働けないストレスなどで、精神的に耐えられなくなってしまう。たまに他人になりかわってしまうという症状だが、本人は知らない。観客としては、一人で妻の症状に悩む夫、娘がおかしくなったことを知る母の気持ちの方に感情移入。


キム・ドヨン監督は女性。「82年生まれ、キム・ジヨン」が、長編デビュー作。その前に、「自由演技」という短編映画で自身の話を映画化していた。キム・ドヨン監督はもともと女優。出産・育児で女優としての経歴が途絶えるという自身の経験を映画に作っていた。まさにキム・ジヨンのような経験をしている。


小説よりも映画が、希望の持てる描き方。例えば、ジヨンが精神的な病気だと本人も家族も知った後、弟がジヨンに会いに行く場面。父親にジヨンが何が好きかを聞くと「あんパン」と言ったのであんパンを買っていくが、実はあんパンが好きなのは弟で、ジヨンが好きなのはクリームパンだった。それだけ父の関心は弟に集中し、ジヨンに向いてなかったということ。「今度はクリームパン買ってくるよ」と言って出ていく弟。

大きな悪気はなくても、ジヨンを傷つけてきたことに気付いた周りの人たちが、心を配るようになり始める、という余韻。


私自身、夫の実家に何か食べ物を送る時、夫に聞くと「お父さんは○○が好き」と言うのに何も疑問を感じず、それを送ってきた。映画を見て、果たしてお母さんは何が好きなんだろう?と思った。男女関わらず、無意識に誰かを無視したり、傷つけたりしているのかも。


小説も映画も、アンチフェミニズムの標的にもなったが、まずは読んで、見てみてほしい。たぶん自分に思い当たる何かが見つかると思う。男女が憎み合うのでなく、互いに尊重できるきっかけになれば。

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