メニューへ 本文へ
Go Top

文化

映画「私のろうそく」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2022-03-03

玄海灘に立つ虹


本日ご紹介する映画は、ドキュメンタリー「私のろうそく(나의 촛불)」です。2016年~2017年にかけて、当時の朴槿恵大統領の退陣を求めるろうそく集会についての映画です。ろうそく集会の成果として、朴槿恵大統領の弾劾が決まり、文在寅大統領が誕生し、そしてまた今月9日には次の大統領選挙が行われるんですね。ろうそく集会から5年ということです。


監督は2人で、俳優のキム・ウィソンさんと記者のチュ・ジヌさん。キム・ウィソンさんはホン・サンス監督作はじめ、映画、ドラマにもたくさん出ていますが、どちらかというと悪役の多い俳優。韓国は日本に比べると俳優も政治的発言や行動をする人がまあまあいますよね。日本は避け過ぎなんじゃないかなと思います。チュ・ジヌさんはテレビでもよく見る記者ですが、2人はMBCの「ストレート」という番組のMCを一緒に担当していた縁で、共同で監督を務めることになったようです。

ろうそく集会についてがメインですが、そもそもろうそく集会に至った経緯、朴槿恵政権がどういう過程をたどって信頼を失っていったのか、という部分も描かれていました。当時の映像と共に、政治家やジャーナリスト、一般市民のインタビュー映像が組み合わさって、様々な立場から朴槿恵政権とろうそく集会について語られます。今年初めにソン・ソッキさんのエッセイ「場面たち」を紹介しましたが、「私のろうそく」にもソン・ソッキさんのインタビューがありました。ろうそく集会の引き金となった「崔順実ゲート事件」の報道など、象徴的な人物ですよね。


今回の大統領選の有力候補者もインタビューに登場しますが、尹錫悦候補は野党、朴槿恵大統領と同じ保守系の政党の候補者ですが、ろうそく集会に関しては、検察として朴槿恵大統領に関する疑惑を捜査する側だったんですよね。ろうそく集会に参加した人たちが、必ずしも今回、与党の李在明候補を支持するわけではないということにもつながっていると思います。

何と言ってもやっぱり主人公はろうそく集会に参加した一般市民だと改めて思いました。本当に寒い冬の夜、毎週土曜日に光化門広場を埋めた人たち。政治家たちは与党も野党も、当初は弾劾に及び腰だったのが、市民の熱気に圧倒されたように見えました。ろうそく集会が見せたものは、国政の私物化は許さない、という姿勢だったと思います。


特に印象的だったのは、ある政治家が「ろうそくは風が吹けば消える」という発言をします。ろうそくでは政治は動かせないと、軽く見ていたわけですよね。それに対抗するかのようにLEDのろうそくが登場します。風が吹いても消えない、というのを見せつけた形です。私もろうそく集会の最後の方、2017年2月下旬から3月上旬に2度参加しましたが、どこかからLEDのろうそくが回ってきて、一緒にLEDのろうそくを持って歩きました。日本でデモというと少し怖いイメージを持つかもしれないですが、参加した感想としてはイベントのような楽しい雰囲気でした。昔の民主化運動はもっと危険でしたが、ろうそく集会は平和的に行われたというのも、記憶したいと思います。


実はこの「私のろうそく」は作られたのはコロナ前で、コロナの影響で公開が2年遅れたそうです。公開延期になっている映画がまだまだたくさんあるんですが、さすがに今回の大統領選を過ぎればろうそく集会の映画はあまりにも時期外れになる、というので、2月に公開されました。

コロナの感染者数が非常に多いなかですが、まあまあ話題になって、4万人近く入っているのでドキュメンタリーとしてはかなり入った方です。日本では断片的にしかろうそく集会について報じられていないので、ろうそく集会に至るまでのストーリーも含めて、日本でも「私のろうそく」を見てもらえる機会があればいいなと思っています。

おすすめのコンテンツ

Close

当サイトは、より良いサービスを提供するためにクッキー(cookie)やその他の技術を使用しています。当サイトの使用を継続した場合、利用者はこのポリシーに同意したものとみなします。 詳しく見る >