小説『愛のあとにくるもの』
2024-05-15
今日は、日常の会話でよく使われる韓国語の慣用句の紹介です。今回は特に、食べ物に関連するおもしろい慣用句をご紹介します。
①파김치가 되다(パキムチになる)
パキムチというのはネギのキムチのこと。パキムチに使うネギは細長いワケギです。新鮮なワケギはまっすぐしゃんとしていますが、キムチのヤンニョムに漬けておくとクタっとしてしまいます。つまり「パキムチになる」とは、とても疲れ切ったり気力が落ちてぐったりした状態をいいます。実際によく漬け込んだパキムチを見ると、ぐったりした感じがよく表れているので、うまい表現だなあと思います。
例:「仕事で一日中歩き回って、すっかり『파김치가 됐어』(パキムチになっちゃった)」
②개밥에 도토리(犬のえさにどんぐり)
개밥(ケーバプ)は犬のえさ、도토리(トトリ)はどんぐり。犬の餌にどんぐりとは、一体どういう意味でしょう? いまでこそ犬の餌はドッグフードを買って与えますが、昔は犬の餌といえば人間のごはんの残飯でしたよね。でも、なんでも食べる犬でも、餌のお皿に転がり込んだどんぐりは食べません。餌皿にぽつんと残されてしまうどんぐりから、この言葉は「仲間外れになること」をいいます。
例:「せっかく久々の同窓会に行ったけど、みんな子どもの教育の話ばっかり。独り身の私は개밥에 도토리(犬のえさにどんぐり)だったわ」
③미역국 먹다(わかめスープを食べる)
미역국(ミヨックッ)はわかめスープ。「わかめスープを食べる」は、「試験に落ちる、落第する」という意味で使われるんです。実はこれには意外にも日韓の歴史が絡んでいるんです。大韓帝国末期、韓国は日本に外交権を奪われ、軍隊も強制的に解散させられます。この「解散(ヘサン)」と同じ発音の「解産」はお産・出産のこと。昔からお産をした女性には滋養をつけるためにわかめスープをよく食べさせます。このヘサンにかけて、わかめスープを食べると解散する、転じて、落第する、試験に落ちる、という意味になったそう。また、わかめはぬるぬるしているので「すべる」にかけて「試験に落ちる」になった、という説もあります。それにしても、わかめスープを食べるという言葉にそんな背景があったとは、驚きです。
例:「一夜漬けで勉強したって、どうせ미역국 먹을 거야!(わかめスープを食べることになるよ) 」
④김칫국부터 마신다(キムチ汁から飲む)
元のことばは「お餅をくれる人もいないのにキムチの汁から飲む」(떡 줄 사람은 생각도 않는데 김칫국부터 마신다)ということわざです。何かをしてくれる人が現れる前から、期待して先走った行動をすることを言います。お餅を食べると喉につかえるので、さっぱりした水キムチの汁で喉を潤しますが(真っ赤な辛いキムチの汁ではありませんよ!)餅を食べる前から汁を飲むのが「先走り、前のめり」を意味する表現になっています。
例:「宝くじが当たる前から大金の使い道に悩むなんて、김칫국부터 마시네(キムチ汁から飲んでるね)」
いかがでしたか? ありふれた単語の組み合わせでも、まったく違う意味合いで使われるのがおもしろいですね。
2024-05-15
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