政府が進める医学部の定員拡大に反発し、全国の研修医らが集団で退職届を提出してから一般医による開業が急増している中、開業した医療機関のおよそ8割以上が、皮膚科だったことが分かりました。これは、収益性とリスクの少なさを考慮した選択とみられています。
健康保険審査評価院によりますと、ことし1月から7月までに一般医が新たに開業した、日本の診療所にあたる病床30床未満の医院クラスの医療機関は176件で、前の年の同じ時期に比べて36%以上増加しました。
このうち、皮膚科が146件で、全体の83%を占めました。次いで整形外科が49件、家庭医学科が42件、内科が33件、整形外科が30件となっています。
一般医とは、医師国家試験に合格して免許を取得したものの、インターンや研修医として医療現場で研修を受け、専門医の資格を取得していない医師を指します。
一般医の開業が急増したのは、去年、政府が進める医学部の定員拡大に反発し、研修医が集団で辞職したあと、多くが研修を断念して開業したためとみられています。
実際、一般医による開業数は2022年に193件、2023年に178件でしたが、去年は285件へと急増しました。
中でも、皮膚科は美容目的の施術など、保険が適用されない診療項目が多く、収益性が高いうえ、法的責任を問われるリスクも比較的低いとされています。
このため、一般医だけでなく、他の診療科の専門医までもが医院クラスの医療機関を開設し、皮膚科の診療を併せて行う場合が増えているということです。
専門家らは、「医療現場に復帰した研修医が人気のある診療科に集中するなど、二極化が進んでいる中、新たに開設された医院クラスの医療機関でも人気の診療科に集中する傾向がある。内科や小児科などの必須医療に空白が生じないよう、対策が必要だ」と指摘しました。