春は緑が美しい季節です。中でも、今日は別れを意味する木、ヤナギに関するお話です。日本でも韓国でも「ヤナギを折る」ということは、旅立つ人を見送ることを意味します。ヤナギは、川辺に育つ生命力の強い木なんです。年中見られますが、特に春になると目立ちます。ヤナギから枝が伸びて、そこから緑の葉っぱが生えます。ヤナギを見ると、本当に春が来たことが分かるのです。昔の詩の中に、ヤナギの枝と、その付近を飛び交う鳥の様子を描いたものがあります。ヤナギは糸に、鳥は機織りの金具に例えて表現しています。そして、美しい緑の葉っぱを歌います。緑がお花よりも美しいという内容です。今日はまず、この詩を歌にした曲、女性の歌曲でヤナギという意味の「ボドゥルン」という曲をお送りしたいと思います。チョ・スンジャさんの歌でお楽しみください。
凍り付いていた川が融けると、船が通れるようになります。それまで留まっていた人々も、遠くに旅立つことができるのです。残る人々は川辺で見送りをしますが、そこにもヤナギが目立ちます。ヤナギを意味する漢字、「柳(りゅう)」は、留まるという意味の「留(りゅう)」と同じ発音です。日本語でもそうですが、韓国語でも同じなんです。それで、昔の人々は、旅立たずに留まって欲しいという意味で、ヤナギの枝を折ってあげたそうです。また、ヤナギの枝は、どんな場所でも、よく根を下ろします。朝鮮時代のホンランという妓生は、恋人のチェ・キョンチャンが去っていくと、ヤナギの詩を作ったそうです。ホンランは、ヤナギの枝を、窓の近くに植えて欲しいと言います。そして、新しい葉っぱが生えたら、自分だと思ってください、とのことです。交通の要地だったチョンアンという地域には、別れを象徴するヤナギが多かったそうです。「チョンアン三叉路、チョンアンサムゴリ」という民謡までできたほどです。この「チョンアンサムゴリ」という民謡を、アカペラのグループ、ソリスツの歌でお聞きください。
中国の河南省にある都市洛陽(ラクヨウ)は、古代から様々な王朝の首都として知られていました。なんと3000年以上の歴史を誇る都市です。それだけ有名な遺跡地も多いようです。また、毎年4月になると開かれる、牡丹の祭りも有名です。韓国の宮中音楽に、「洛陽の春」という曲があるんです。高麗時代に中国から伝わった詩を歌にした音楽です。その詩にも、ヤナギが登場します。ヤナギを見つめながら、旅立った人を想う内容です。日本でも、韓国でも、中国から伝わる詩の中でも、ヤナギは別れを象徴するものであったようです。今日の最後は、「洛陽の春」をお送りしたいと思います。 KBS国楽管弦楽団の演奏でお楽しみください。
別れを象徴するヤナギですが、昔の音楽にも色んな形で表れています。誰かを恋しく思うことは、時には辛いことです。でも、恋しい人がいるということは、幸せなことでもあると思います。
ここまで、韓国伝統音楽、国楽の世界へみなさんをご案内いたしました。この番組は、KBSワールドラジオのホームページでもお聞きになれます。なお、著作権の問題でバックナンバーはお送りいたしておりませんのでご了承ください。国楽の世界へ、キム・ボエでした。