韓国の楽器、コムンゴの由来は、高句麗時代の話にさかのぼります。当時、中国からある楽器が送られてきました。高句麗の人々は、それが楽器だということは分かるものの、演奏の仕方が分かりません。それで、当時の首相、王山岳がその楽器に手を加え、演奏できるように作ったそうです。それが、コムンゴです。コムンゴは、琴の一種で、弦は6本です。左手で弦を押え、右手ではスルテという棒で演奏します。彼が演奏するコムンゴの音色を聞いて、黒鶴が飛んできて踊りだしたとのことです。これが歴史に伝わるコムンゴの由来です。東洋では、鶴は平和な時代を意味する縁起の良い動物で知られます。昔の人々にとってコムンゴという楽器は、自然と合わさって、自然を感動させるものだったようです。人と動物が合わさって平和に生きることを象徴する音楽、それが、昔の人々が考えるコムンゴの役割でした。それでは、まず、コムンゴの独奏曲をお送りいたします。イ・オキュさんの演奏で、「ドドゥリ」という曲です。
「ドドゥリ」は、ひとつのリズムが六つの拍子で構成される曲です。適当なスピードで、余計な伴奏はせず、一拍ずつ演奏します。速いスピードや華やかなリズムに慣れている現代の私たちには、少し退屈かもしれません。でも、長い時間聞いていると、その真価が分かります。食べ物に例えてみると、刺激のある味はすぐに飽きますが、あっさりとした味は長い時間食べても飽きないのと同じです。昔の学者ソンビは、何事も、有りのままの姿に従いました。そこから心の平和を見出し、世の中と融合するのが、ソンビが追及した暮らしです。「ドドゥリ」からは、そんな精神が感じられます。先ほど、高句麗時代のコムンゴの由来をご紹介いたしました。でも、学者らによると、王山岳の時代よりはるかに昔から、高句麗にはコムンゴと似た楽器があったとのことです。文化は、移動したり発展するもののようです。次は、コムンゴの演奏と歌をお聞きいただきます。楽器を演奏しながら歌う、ビョンチャンというジャンルです。「コムンゴのビョンチャン、名人の歌」をシン・クェドン先生の演奏と歌でお楽しみください。
ビョンチャンは、楽器の演奏と歌、両方できなければならないため、簡単なことではありません。コムンゴのビョンチャンを初めて作った方が、シン・クェドン先生です。今でも、先生の弟子一人以外は、コムンゴのビョンチャンがきちんとできる人はいないとのことです。コムンゴは、長らく学者ソンビに親しまれた楽器です。しかし、朝鮮時代末、喜びや悲しみ、怒りや楽しい感情をコムンゴで演奏する刺激的な音楽が登場しました。すると、ソンビは、世の中が乱れたと嘆いたとのことです。最近は、電子コムンゴとか変わった形の棒で演奏するコムンゴ、弦の数を変えたコムンゴなども登場しています。現代の人々にもう少し親しまれやすい形で演奏する試みが目立ちます。最後にご紹介する、コムンゴファクトリーというグループもその一例です。コムンゴファクトリーの演奏で、「コムンゴ・アンド・タンゴ」という曲をお楽しみください。
コムンゴファクトリーの演奏で、「コムンゴ・アンド・タンゴ」という曲でした。昔の伝統を守ろうとする人々の一方では、伝統の枠から抜けて新しいものを作り上げようとする人々もいます。文化というものは、そのようにして変化し発展していくもののようです。