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映画『破墓』

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2024-04-03

玄海灘に立つ虹


〇本日は、映画『破墓』をご紹介します。破壊の破に墓でパミョですが、昨年の『ソウルの春』に続いて観客数1000万人を超える大ヒットになっています。『サバハ』『プリースト 悪魔を葬る者』で知られるチャン・ジェヒョン監督、主演がチェ・ミンシク、キム・ゴウン、ユ・ヘジン、イ・ドヒョンと演技派俳優たちで、私も公開初日に見ました。
キム・ゴウンが演じるのはムーダンのファリム、ムーダンは日本語では巫女とも訳されますが、日本で想像する巫女とはだいぶ違って韓国独特のシャーマン。映画やドラマにはたくさん出てきます。映画『哭声/コクソン』ではファン・ジョンミンがムーダンを演じていました。
ムーダンの‘クッ’という儀式が一つの見どころで、誰かが憑依するんですね。そもそも演技って誰かになりきって演じるものですが、さらにそのキャラクターに別の誰かがのりうつる。演技中の演技で、キム・ゴウンがどう演じるかっていうのが見たくて『破墓』を見た人も多かったと思います。
チェ・ミンシクが演じるのは風水師のサンドク。これはなんとなく分かると思います。家をどこに建てたらいいか、お墓をどこにしたらいいか、風水を見る人です。最近、サジュという四柱推命を見てもらったんですが、それを見るおじさんが破墓を見たかと聞くので、見たと答えたら、「私の本業はチェ・ミンシクの演じた風水師です」と言ってました。実際、いるんですね。
ユ・ヘジンが演じるのは葬儀師のヨングン。葬儀の専門家です。葬礼指導師とも言うんですが、国家資格があって、チャン・ジェヒョン監督はこの映画のために葬礼指導師の資格を取ったそうです。

〇映画では、ファリムとその弟子のボンギル(イ・ドヒョン)が米国のLAに向かいます。ある在米コリアンの資産家の依頼を受けて行くのですが、代々、謎の病にかかって、どうすればいいのかという相談で、ファリムはそれが先祖の墓の場所が悪いからだと言います。
先祖の墓は韓国にあり、そこでサンドク、ファリム、ヨングン、ボンギルが‘破墓’、墓を掘り出します。韓国では実際けっこうあることで、‘移葬(イジャン)’と言って、墓の場所を移すんですね。『移葬』というタイトルの映画もありましたけど、その映画では、いったん土葬していたのを、火葬するというものでした。韓国は長く土葬中心の国だったんですが、近年は火葬に変わってきました。
『破墓』でも、掘り出して火葬することになっていたんですが、火葬の前にお棺を開けてしまい、そこから悪霊が外へ出てしまって、奇怪な出来事が起こり始めます。


〇私は映画を見るまで知らなかったんですが、日本とも関連する部分があるんですね。冒頭でLAに向かう飛行機に乗ったファリムが日本語で話す場面があって、あれ?と思ったんですが、けっこうたくさん日本語が出てきました。というのも、この資産家一家の先祖は、いわゆる‘親日派’。日本に親しみを持つという漢字ですが、韓国で‘親日派’と言うと、日本の植民地支配に協力したという意味が含まれています。
それが呪いの原因になっているとも言えるんですが、あんまり話すとネタバレなのでこのへんにしておきます。
これは映画を見た後に知ったんですが、4人の主人公の名前が、いずれも独立運動家や、親日派の断罪に関わった実在の人物の名前だそうです。特に有名なのは、イ・ドヒョンが演じたユン・ボンギルで、独立運動家です。もちろん、映画の時代背景は現代なので、同じ名前をキャラクター名に使っただけで、その人物を描いているわけではないのですが、オカルト映画に日本植民地時代の歴史を重ねたという点で、多くの人の関心を引いた面もあったようです。

〇個人的には後半はファンタジー色が強くなってちょっとついていけなくなったところもあるんですが、それでも韓国のシャーマニズムがメインの映画という点、それを演技派俳優たちが見せてくれるという点で、とってもおもしろかったです。日本でも公開されるようなので、ぜひ見てもらいたいなと思います。

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