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文化

「トラが下りてくる場面」ほか

#国楽の世界へ l 2023-09-05

国楽の世界へ

「トラが下りてくる場面」ほか
韓国の伝統芸能、パンソリ、「水宮歌(スグンガ)」は、山の中で生活していたウサギが、カメに騙されて海へ行き、死ぬ危機に陥ると、噓をついて竜王を騙し、戻ってくるというお話です。カメは、病になった竜王のために薬として使うウサギを捕まえようと、生まれて初めて陸地に出ました。遠くで様々な動物が集まって遊んでいる様子が見えます。ウサギに海へ行こうと言っても従うはずがないので、うまい言葉で誘ってみることにします。ウサギを高めるため、ウサギ先生という意味の「トセンウォン」と呼びかけようとしたのですが、海を泳いで遠くまで出かけてきたカメは疲れたせいか発音を間違えてしまいます。トラという意味の「ホ」に先生をつけて、「ホセンウォン」と言ってしまったのです。ウサギの傍にいたトラは、自分のことを先生と呼ぶので、嬉しさのあまり、カメに近づきました。カメからすると、大きなトラが自分に向かってくるので、なんと恐ろしかったか分かりません。その様子を表現したのが、「トラが下りてくる場面」という曲です。この音楽、手で拍子を合わせてみると、どこか合わないという気がするんです。これは、「オッモリ」という拍子の特徴です。まずはお聴きになってみてください。

オッモリ拍子は、二拍と三拍の五つの拍子を二度繰り返します。二拍と三拍が一定のスピードで交差するわけではないので、まるで、よたよたと歩くような感じがしてしまうんです。オッモリとは、食い違うという意味の「オグッナダ」という言葉から由来したものです。「オグッナダ」という言葉は、会えそうで会えなかったとか、ぴったり合いそうで合わないけれど、でも、全く合わないわけではないという意味です。オッモリ拍子は、合うようで合わないような、平凡ではない拍子だという意味です。今度は、オッモリの拍子を数えながらお聴きになってみてください。

同じことを繰り返す日常は、少し退屈に思えるかもしれません。そんな中で、懐かしい人に合うとか、些細なことでも小さなイベントなどがあると、幸せな日になるでしょう。国楽でそんな役割をするのが、オッモリ拍子といえます。だから、オッモリ拍子を用いる音楽は、そんなに多くはありません。パンソリでは、ストーリーの中で重要な人物が登場するとき、オッモリ拍子を用います。先ほどの「水宮歌」であれば、トラが下りてくる場面とか、竜王が病になり道士が現れるときなどです。今日の最後は、パンソリ、「フンボの歌」の中で、重要な人物が登場するときの場面です。貧しいフンボと妻が泣いていたとき、僧侶が現れて、お金持ちになる家の敷地を教えてくれたおかげで、フンボ夫妻は大金持ちになります。僧侶が現れたことで、新しい展開となったため、オッモリ拍子が用いられたのです。

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