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ピープル

ソプラノ歌手、イム・ソンへ

2016-04-19

4月10日、ソウルの南部、瑞草(ソチョ)区にある「芸術の殿堂」で、「芸術歌曲の旅」と題した春の音楽会が開かれました。この舞台で、海外での活動を終え、5カ月ぶりに帰国したソプラノ歌手、イム・ソンへさんが美しい歌声を披露しました。

1976年生まれ、40歳になるイム・ソンへさんは、今年、デビュー16年目を迎えました。ソウル大学で声楽を専攻し、ドイツのカールスルーエ国立音楽大学に留学していたイム・ソンへさん。ドイツ留学中だった彼女は、ベルギー生まれの天才古楽指揮者、フィリップ・ヘレベへに抜擢され、ヨーロッパで活動することになりました。

「古楽」とは、バロック音楽やルネサンス音楽など、古いヨーロッパの音楽のことで、作曲当時の楽器や奏法で再現される音楽です。華麗なテクニックやスケールより、自然に似たやさしさが感じられる音や声が特徴です。しかし、やさしく、しかも澄んだ声で歌うのは想像以上に難しく、西洋でも古楽に挑む声楽家は多くありません。そんな中で、韓国のイム・ソンへさんはヨーロッパで「歌う小さな巨人」、「ヨーロッパ古楽のプリマドンナ」と呼ばれ、その実力を認められているのです。



イム・ソンへさんが本格的に歌の勉強を始めたのは高校2年生の時からでした。母親譲りの美しい声を活かし、アナウンサーを目指していたイム・ソンへさんは、周りの勧めで声楽を始めることになったのです。スタートは遅かったものの、生まれ持った才能と努力で、イム・ソンへさんはソウル大学音楽大学に進むことができました。その後、韓国で開かれるさまざまなコンクールに出場、入賞を重ね、着実に実力を磨いていきました。そして、一人しか選ばれないドイツ留学獎学生となったのです。ドイツへ留学して1年あまりが経った1999年12月、イム・ソンへさんに、偶然、公式舞台デビューの機会が訪れます。ベルギー出身の天才古楽指揮者、フィリップ・ヘレベへが指揮する舞台にピンチヒッターとして上らないかという提案でした。公演前日に受けた提案でしたが、イム・ソンへさんは迷うことなく、できると答えました。この公演をきっかけにヨーロッパ古楽の巨匠に実力を認められたイム・ソンへさんは、その後、さまざまな舞台からラブコールを受けます。こうした関心が一時的なものだと考える人もいましたが、2006年に行われた「ドン・ジョヴァンニ」の公演をきっかけに彼女に対するヨーロッパの視線が変わります。ヨーロッパ全域に放送された「ドン・ジョヴァンニ」の公演で、アジア人のソプラノ、イム・ソンへさんが演じた田舎娘、チェルリーナが注目されたのです。

ベルギー出身の指揮者、ルネ・ヤーコプスは自敍伝の中で「歌が上手なだけではなく、演技も上手で、配役と自分の体が一つになる歌手がいる。それがイム・ソンへさんだ」と記しています。また、フランスの古楽専門の音楽レーベル「ハルモニア・ムンディ」はイム・ソンへさんの声を記録として残すべきだと評価し、アジアの声楽家としては初めて、単独アルバムを制作しています。

世界的に実力を認められるようになったソプラノ歌手、イム・ソンへさん。彼女はいつも情熱は冷めないように、しかし、欲は出さないよう心掛けています。彼女がこうした考えを持つようになったのは、2002年、父親の死を経験してからでした。父親の葬儀から2ヶ月が経ち、ドイツに戻って公演舞台に立った彼女は、素晴らしい人たちと一つの舞台に立てることがどんなに幸せでありがたいことかしみじみと感じました。仕事とばかり考えていた音楽が、大きな幸せを感じさせてくれる贈り物のように感じられたのです。音楽が与えてくれる幸せを分かち合いたいと思ったイム・ソンへさんは、2009年から「希望の分かち合いコンサート」などに参加しながら自分の才能を活かしたボランティア活動を続けています。

指揮者、フィリップ・ヘレベへの舞台でデビューして16年。ヨーロッパ古楽のプリマドンナと呼ばれるまでになったイム・ソンへさんは、古楽という一つのジャンルにこだわらず、柔軟性を持っていろいろなジャンルに挑戦し、常に自分の音楽と声を磨く姿勢で生きていきたいと語っています。

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