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ピープル

韓国の伝統酒を研究しているパク・ロクダム

2016-05-17

ソウルの都心、鐘路区(チョンノク)西村(ソチョン)にある韓国伝統酒研究所。毎週火曜日の午前10時から午後1時まで、ここ伝統酒研究所では、韓国に伝わるさまざまな種類のお酒=伝統酒に関する講義が開かれ、お酒の醸造法にとどまらず、伝統酒の魅力を伝えています。その中心には「伝統酒の大家」と呼ばれる韓国伝統酒研究所の所長、パク・ロクダムさんがいます。

1959年生まれ、今年57歳になるパク・ロクダムさんは、30年あまりにわたって伝統酒を研究し、忘れられていた千種類あまりの伝統酒を復元、その風味を再現してきました。パク・ロクダムさんがお酒を造りはじめたのは今から30年前、1986年のことでした。11年が経った1997年から、彼は伝統酒の復元にとりかかります。パク・ロクダムさんが伝統酒の復元に関心を持つようになったのは、お酒が好きな父親の影響でした。父親にお遣いを頼まれてお酒を買いに行っていた彼は、いろいろな種類のお酒を買うため、密造酒を売っているところに出入りしながらお酒の風味を知ったのです。



伝統酒の研究家として知られるパク・ロクダムさんは面白い経歴を持っています。1984年、大学を卒業した年に、新聞社の新春文芸などで新人賞を受賞し、その後、詩人としても活動しているのです。詩人としてデビューしたパク・ロクダムさんが本格的に伝統酒の研究をしたいと言い出した時、賛成してくれる人はいませんでした。結婚してからも伝統酒は夫婦喧嘩の原因となりました。将来が保証されない伝統酒の研究や復元に持っているお金をすべてつぎ込んでいたからです。

家族の反対にもかかわらず、パク・ロクダムさんはあきらめませんでした。詩を書きながらお酒も造り続けたいと思った彼は、韓国の伝統的な食文化に関する雑誌社に就職します。酒専門の記者として全国を巡りながら取材し、韓国のお酒について学んでいったのです。1997年に起きた通貨危機の影響で会社が倒産、職を失った時もパク・ロクダムさんは伝統酒の研究をあきらめることができませんでした。そして2002年、中国の北京で開かれた酒博覧会でようやく韓国の伝統酒を紹介する機会を得ることができたのです。しかし、彼が造ったお酒を飲んだ人は「かび臭い」という反応を示しました。酒を造る時に使う麹の匂いでした。それまで、133種類の伝統酒について復元し、お酒の風味については自信を持っていたパク・ロクダムさん。他の国のお酒に比べて、韓国の伝統酒から麹の匂いが強く感じられる原因を突き止めるための研究に取り掛かります。

それまでパク・ロクダムさんが復元した133種類のお酒はすべて韓国の解放以降、密造酒を取り締まっていた時期に作られたものでした。この時期は、家でお酒を作るのが違法だったので、酒を早く発酵させようと麹を多めに入れていたのです。そこで、彼は植民地支配時代以前、朝鮮時代の記録を調査し、その中の一つ、「惜呑酒(ソクタンジュ)」を造ってみました。味と香りが良くて呑んでしまうのが惜しいお酒という意味の「惜呑酒」。しかし、その復元過程は想像以上に難しいものでした。日本による植民地支配時代、お酒に税金を課する酒税令が出されたため、家庭で作られていた伝統酒は消え、画一化されたお酒しか飲めませんでした。こうして、代々伝わってきた伝統酒の作り方が忘れられていったのです。

1997年、「惜呑酒」の復元に成功したパク・ロクダムさんは、これまで延べ1020種類の伝統酒をよみがえらせてきました。長年、韓国の伝統酒を復元するために努力してきた彼は、韓国の伝統酒について、その作り方だけではなく、飲み方までマスターしてこそ完成するのだといいます。彼は伝統酒をよみがえらせることで、お酒を飲みながら詩や絵を書き、歌や舞いを楽しんでいた韓国の風流もよみがえらせたいと願っています。風味豊かなお酒が芸術作品に溶け込んだ時、本当の名作、名品が生まれると信じているのです。そして、伝統酒研究所での講義を通じてこの哲学を伝えています。

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