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旅行

近代韓国の激動の歴史をともに歩んできた王宮、徳寿宮

2010-11-16

近代韓国の激動の歴史をともに歩んできた王宮、徳寿宮

ソウル地下鉄1号線と2号線がクロスする市庁(シチョン)駅の徳寿宮(トクスグン)方面出口を出ると、規模の大きな徳寿宮の正門、大漢門(テハンムン)が見えます。ここ大漢門では1日3回、王宮を守る近衛兵、守門将(スムンジャン)の交代儀式が行われます。王宮で行われるだけあって、かなりの規模の厳かなセレモニーで、外国人観光客にも大人気です。

朝鮮王朝時代、王がとどまる王宮は王の威厳を象徴する建物で、ソウルにある5つの王宮、景福宮(キョンボックン)、昌慶宮(チャンギョングン)、昌徳宮(チャンドックン)、慶煕宮(キョンヒグン)、徳寿宮(トクスグン)でも朝鮮王朝の歴代の王の権威をうかがうことができます。

現在、徳寿宮の正門はソウル市役所、ソウル市庁に面している大漢門ですが、もともとの正門は南の方にある仁化門(インファムン)でした。近代に入って日本や中国の清など、外国の勢力が朝鮮に勢力を延ばしてくると、朝鮮王朝26代目の王、高宗(コジョン)はこれに対抗するために、自ら皇帝に即位して、国号も朝鮮から大韓帝国に改めます。当時、徳寿宮の東の方に天に祭礼を捧げるための祭壇、ファング壇が設けられていました。東の門、大漢門の前にはファング壇に通じる大通りができ、その結果、東の門だった大漢門が徳寿宮の正門になったんです。

ソウルにある5つの王宮のうち、一番規模が小さい徳寿宮は王が行幸の時に立ち寄る行宮として建てられたものです。1592年、日本の豊臣秀吉によって壬辰倭乱、文禄・慶長の役が起きると、当時の王、宣祖(ソンジョ)は現在の北韓にあたる義州(ウィジュ)に身を避けます。王が都に戻った時、王宮の景福宮をはじめ、離宮の昌徳宮など、すべての王宮が焼失してしまったため、行宮の徳寿宮が臨時の住まいとなりました。王が復元された昌徳宮に移り、その後274年間、徳寿宮は王宮として使われることなく、閉ざされたままになっていました。

その徳寿宮が韓国の近代史において重要な役割を果たすことになります。1895年、朝鮮王朝26代目の王、高宗の妃、明成(ミョンソン)皇后が日本の刺客によって暗殺されるという悲劇的な事件が起きました。身の危険を感じた高宗はロシアとより緊密な関係を結ぶためにロシアの公使館に身を隠し、その後1897年2月に徳寿宮に身を移しました。高宗は1897年10月に国号を「大韓帝国」に改め、天に祭礼を捧げるための祭壇、ファング壇で皇帝に即位したのです。後に日本による支配が始まると、日本は象徴的な意味を持つファング壇を取り壊し、その場所に現在の朝鮮ホテルを建ててしまいます。今はホテルの横にファング壇の付属の建物だった3階建ての「ファングウ」だけが残っています。

こうした努力にもかかわらず1905年、大韓帝国は日本の圧迫で外交権を奪われ、2年後に高宗は日本によって強制的に皇帝の座を奪われてしまいました。そして1910年には日本の植民支配下に置かれることになったのです。韓国の王権と国権が失墜していく悲しい歴史を徳寿宮はともに歩んできたのです。

元来の徳寿宮の面積は現在の3倍、建物の数も現在の10倍以上でした。ところが1910年、日本による植民支配が始まると、徳寿宮の敷地は土地として売られ、道路を広げる時も内側に押し込めるように作られたために、徳寿宮の境内は元来の3分の1になってしまいました。

規模は小さくなったものの、徳寿宮の美しさは変わりません。正門の大漢門をくぐると、禁川橋(クムチョンギョ)という小さな石橋があります。王宮に足を踏み入れる前に橋をわたりながら心身を清めるという意味があります。禁川橋をわたると中和門(チュンファムン)という立派な造りの門があり、さらに奥の方に歩いていくと、徳寿宮の正殿、中和殿(チュンファジョン)が見えます。毎週土曜日の午前9時から午後4時まで、中和殿の内部が公開されていて、今なお王の権威を漂わせる立派な造りの王座を見ることもできます。中和殿の隣には3階建ての石造の建物があります。石造殿(ソッチョジョン)と呼ばれるこの建物は高宗皇帝の近代化に対する意志を象徴するものでした。高宗皇帝は王権の強化だけではなく、大韓帝国の近代化にも積極的で、王宮の中に西洋風の建物を建てたのです。徳寿宮にはこの他にも高宗皇帝が亡くなる前までとどまっていた建物や暗殺された王妃の位牌が祭られていた建物、姫の幼稚園として利用されていた建物など、韓国の近代史を物語る建物が残っています。

徳寿宮は大韓帝国の近代化を夢見た皇帝、高宗の野望と韓国の悲しい近代史をともにしてきた歴史の現場なのです。

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