北韓のメディアが、金正恩（キム・ジョンウン）国務委員長の娘、ジュエ氏について、「進むべき方向を示す」という意味の「嚮導」という、北韓で指導者に対して用いる呼称を始めて使ったことで、北韓でジュエ氏を偶像化する手続きが本格化したのではないかという見方が出ています。  
 
北韓の朝鮮中央通信と労働党機関紙「労働新聞」は16日、金委員長とジュエ氏が前日に温室栽培を行う農園を訪れたことを報じた際、「嚮導者・金正恩」「党中央の嚮導」という表現とともに、「嚮導の偉大なる方たち」と複数形を使い、ジュエ氏が指導者の資格を持つことを示唆ました。
 
おととし11月に初めて世間に姿を現したジュエ氏について、北韓はこれまでは、名前は呼ばず、「愛するお子様」または「尊敬するお子様」と紹介してきました。
 
金委員長を呼ぶときに使われた「嚮導」という呼称を、今回、ジュエ氏にも使ったことから、後継者としてジュエ氏を偶像化する作業が本格化する可能性があるという見方が出ています。
 
政府の消息筋は、「後継者を示す表現を住民に段階的に露出しているとみられる。今回の農園の視察のほとんどがジュエ氏を主人公とする構図で演出された」と説明しています。
 
情報当局も、「これまでの公開の様子や礼遇の水準などからして、現時点では、ジュエ氏を有力な後継者とみている」と話しています。
 
一方、金委員長とジュエ氏が温室栽培農園を訪問する際に使った車は、先月、プーチン大統領がプレゼントしたロシア製の最高級自動車「アウルス」で、朝鮮中央テレビは16日、二人がこの車に乗って移動する様子を公開しました。
 
この車は、防弾用の装甲が施され、化学兵器の攻撃に対しても防御するシステムを備えているということです。