韓国語には看護婦という名称はなく、もともと看護士と呼ばれているのですが、「白衣の天使」という言葉が韓国でも使われているように、看護士といえば女性の職業というイメージでした。
でも最近では男性看護士が増えています。看護士の国家試験を受けた男性の数は5年前には200人余りだったのが今年は800人余りと4倍増えています。看護学科の男子学生は10年前に600人、去年は6600人余りと10倍以上増えている状況です。
実際、医療現場では、医師と患者の関係をスムーズにしてくれるということで男性看護士の需要が増えてきているということですし、応急手当室や集中治療室などでも男性の看護士は重宝されています。
韓国で看護士は女性の職業だという認識がどれだけ根強いかを端的に示す例があります。国軍(韓国軍)看護士官学校です。ここは1951年に開校して以来これまで男子禁制の伝統を守ってきました。看護士官学校の卒業は看護学士だけでなく看護士免許の取得とイコールで、そのうちの30%は保健教師の資格がもらえるので国公立の学校に勤めることができます。ただ卒業してからはいったん少尉として6年間軍で勤めることになります。でも在学中の4年間学費や宿泊費が免除され、月30万から35万ウォンの月給をもらえます。特に男性にとって有利なのは、卒業して6年間勤めれば軍隊が免除になるので、何よりのメリットになります。国軍看護士官学校設置法では入学の資格を「17歳以上22歳未満の未婚女性」としていましたが、2004年に「未婚者」と改正されました。それでも男性を受け入れることには消極的でした。男性を入学させるようにという国家人権委員会の勧告もありましたが、うんともすんともいいませんでした。
それが、来年から国軍看護士官学校で男性の士官候補生を採るということです。国防部はこれまで年に15人の看護将校を一般採用してきましたが、士官候補生の養成を多様なチャンネルを通じて行い、増えるニーズに対応する人材を確保するために看護士官学校で男性を受け入れることを決めたということです。その数は来年の新入生85人のうち8人ということで、現在看護士官学校を志望する男性が500人余りと推定されている割にはまだまだ少ないのが現状ですが、60年間にわたる男子禁制が解禁されるということで注目されています。
看護士とは関係ない話ですが、陸軍、海軍、空軍士官学校も志願率が過去最高の競争率となっているとのこと。4年間の学費がただで、月給ももらえるという点が士官学校の共通点ですが、就職難のなか、実益を考える若者や、人の目を気にせず自分のやりたいことを職業にしたいという風に柔軟に物を考える若者が増えているといえるのではないでしょうか。