今月初め、アメリカ・ニューヨークにあるマクドナルドで、マクドナルド側が呼んだ警察に韓国系老人6人が追い出されるという事件がありました。その背景には移民第1世代の高齢化と社会からの疎外という問題があると分析されています。
事件は、マクドナルド側が、「韓国系の老人6人が長時間席を占領していて営業妨害になる」と警察に通報、警察が出動して6人を店から追い出したというものです。15日付のニューヨークタイムズによりますと、マクドナルド側は「店内のテーブルに20分以上とどまることはできない」という案内文を店内に掲げているとして、当時この案内文を指して6人に、出ていってほしいと要請したが受け入れられなかったため、警察に通報したとしています。
この事件は、移民第1世代の高齢化と深い関係があると言えます。韓国人がアメリカに移住したのは1903年、7000人がハワイの農場に労働者として渡ったのが始まりで、本格的に移民が始まったのは、アメリカがアジア出身の移民者を受け入れ始めた1965年からということです。
アメリカのある大学の調査によると、韓国系アメリカ人のうち60歳以上の人口は2006年現在、全体の10%でした。2010年のアメリカの人口調査で韓国系アメリカ人が141万人ということですから、現在は14万人以上が60歳以上とみなすことができます。
移民1世はいわゆるアメリカンドリームを実現するために働きづめの日々を過ごしたため、今なおアメリカ社会に完全に溶け込むことができないでいるのが現状です。また、アメリカで教育を受けた1.5世や2世は英語が母国語なので、コミュニケーションが満足にとれないことも少なくありません。そのため、1世は1世同士集まって時間を過ごすのが日課である場合が多いのです。
ニューヨークタイムズはさらに、「老人たちが1、2ドルのコーヒーやフレンチフライをオーダーしただけで長時間待合室のようにマクドナルドを利用してきた」と指摘し、「去年11月からこれまで、老人たちを追い出してほしいという届出が、管轄の警察署に4回あった」と伝えました。
ニューヨークにある韓国系住民の団体らは、マクドナルドに対する不買運動を行うとして、双方が鋭く対立していましたが、結局和解して収まりました。現地時間の20日に行われた記者会見で、マクドナルド側は「午前11時から午後3時までの時間を除いた時間帯は高齢者に配慮する」、「いかなる場合でも警察に通報して客を追い出すようなことはしない」、「テーブルの利用時間を20分とする措置を撤回する」「韓国語の流暢な韓国人を社員として採用する」などと明らかにしました。また、韓人老人会のほうでは「マクドナルドが高齢者を人種差別、社会的弱者として差別したとは思わない」として「午前11時から午後3時までは利用を自粛する」などと約束しました。
今回の事件はアメリカのマクドナルドの特定のお店と韓国系住民の間で起こったものですが、どちらが悪いとか悪くないという問題ではなく、いろいろなことを考えさせられる事件だったように思えます。