今回の旅客船の沈没事故と関連し、ニュースでたびたび名前の出てくる
事件があります。今回と同様、多くの子供たちが犠牲者となった事故、
シーランド火災事故です。これは1999年6月30日京畿道にある青少年修練施設の
シーランドで火災が起こり、児童19人を含む23人が死亡、5人が負傷した事故でした。
この時も施設の火災報知器が不良品で、消火器は使われた形跡もなく、初期通報が遅れ鎮火に手間取るなど、今回の事故と共通する人災的な要素が多数ある事故でした。
このシーランド火災の際に遺族の一人にホッケーの韓国代表選手で、ソウルオリンピックのメダリストでもあったキム・スンドクさんがいました。彼女はこの火災で長男を失い、その後の政府の事件処理に失望し、メダルや勲章を返上してニュージーランドに移住しました。
当時、彼女は「この国にこれ以上期待することはできない。次男は安全に育てたい」という言葉を残し、メダルと勲章を郵便ポストに投げ入れ、ニュージーランドに渡りました。その彼女に今回、中央日報が電話で取材した記事がありますので、ご紹介したいと思います。
記者 今回の沈没事故のニュースは聞きましたか?
キム インターネットなどでニュースを見ています。他人事とは思えず、胸が痛み
ます。ニュースを見ないようにしようと思っても、つい目がいってしまいます。
記者 子供たちが犠牲となる大型事故がまた起きました。どう思いますか
キム 信じられないような事故が繰り返されています。ニュースでコリアで
始まるニュースが流れるたびに胸がドキンとします。
政府が右往左往するのは相変わらずだと思いました。
記者 どうして韓国ではこういう事故が繰り返し起こるのでしょう。
キム 韓国の教育が間違っていると、ここに来て思いました。自分だけ良ければ
良いという教育が間違っているのです。
そして不幸な大事故を繰り返さないためには皆が変わらなくてはなりません。
自分の家族、自分の子供が被害を受けるかもしれないという考えで、誰もが
安全な社会を作るように努力すべきです。
そして彼女は自分自身にも、事故の当時誤りがあったと語ります
キム 振り返ってみれば私自身にも誤りがありました。私であれ誰であれ、幼稚園
の父母の中の何人かが事前にあの施設を見に行っておけばよかったと悔やん
でいます。ここでは子供たちが団体でキャンプに行ったり、遠足に行くこと
になれば父母が事前にチェックをしにいきます。そして当日、子供たちに
付いていく父母もたくさんいます。
勲章やメダルを棄ててニュージーランドに移住したことに後悔はないかという問いにも、彼女はないと答えました。そして現在はニュージーランドで生まれた三男、そして韓国生まれの次男と共に、ご主人と一緒に中華料理店をしています。
最後に今回の事故の家族に対して何か一言をという記者の質問に対して彼女は
キム 息子を失い、その悲しみに耐えられずにいたときに「一生辛い、悲しみ
なのだから、今日で全部悲しもうと思うな」と言われました。この言葉を
そのままお伝えしたいです。子供を先立たせた親は想像できないような苦痛
を味わいます。マスコミや周りの人が何気なく語る一言にも深く傷つきます。
周りの温かな一言が本当に大きな力になります。
第2、第3のキム・スンドクさんが出るような社会であってはならないのですが。
心から心配です。