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ライフスタイル

小説の盗作とは

2015-06-24

玄海灘に立つ虹

小説の盗作とは
「母をお願い」で日本でも有名な韓国のベストセラー作家、申京淑(シン・ギョンスク)さんが、日本の小説家、三島由紀夫の作品を盗作したという疑惑が提議され問題となっています。
事の発端は今月16日、 文学評論家のイ・ウンジュンさんがインターネット上の投稿で、申京淑さんの短編小説『伝説』(1996年)の一部が故・三島由紀夫の短編小説『憂国』を盗作したものだと主張したことです。
三島由紀夫の「憂国」は韓国では83年に翻訳出版されています。イ・ウンジュンさんはこの小説の新婚夫婦が性愛に目覚めるシーンを描写した五つの文章を盗作したと指摘し、さらに申氏の別の三つの作品をめぐっても盗作疑惑が持ち上がっています。
これに対して 申京淑さんは当初、

「三島由紀夫の作品は「『金閣寺』以外は読んだことがなく『憂国』は知らない」」

と盗作を否定、『伝説』が収録された小説集を出版した創作と批判社も

「いくつかの文章が似ているとしても、これを根拠に盗作をうんぬんするのは問題だ」

と言っていました。しかしその後、世論の批判の声が高まるとまず出版社側が

「盗作を提起されてもおかしくない」

と立場を一変し、申京淑さんも結局23日の京郷新聞とのインタビューで

「『憂国』と『伝説』を何度も読み比べた結果、盗作との問題提起は妥当だと思った。いくら過去の記憶をさかのぼっても『憂国』を読んだという記憶はないが、もはや私も自分の記憶を信じられない状況になった。出版社と協議して『伝説』を、収録した単行本から削除する。文学賞の審査委員などすべてを辞退し、自粛する時間を頂きたい。この問題を提起した文壇関係者を始め、私の周囲の方々、何より私の小説を読んだ多くの読者の方々に誠に申し訳ない」

と答えています。では最後に今回問題となった三島由紀夫の「憂国」と申京淑さんの「伝説」の盗作だと言われている部分を比較してみましょう。まず三島由紀夫の「憂国」では

二人とも実に健康な若い肉体を持っていたから、その交情は激しく、夜ばかりか、演習のかえりの埃だらけの軍服を脱ぐ間ももどかしく、帰宅するなり中尉は新妻をその場に押し倒すことも一再でなかった。麗子もよくこれに応えた。最初の夜から一ト月をすぎるかすぎぬに、麗子は喜びを知り、中尉もそれを知って喜んだ。

となっている箇所が申京淑さんの「伝説」では

2人とも健康な肉体の持ち主だった。彼らの夜は激烈だった。男は外から帰ってきて、土埃のついた顔を洗う暇も惜しく、急いで女を押し倒すのが毎度のことだった。最初の夜から2カ月後、女はすでに喜びを知る体になった。

正直、似ているような気はしますが、でも盗作だというほどのことなのか、よく分かりません。私も翻訳の勉強をするときに、好きな作家の文章を書き写してその文体を身につけようとしたことがあります。翻訳でも、創作でも、そういう部分はある程度あると思います。
申京淑さんは2008年に発表した長編「母をお願い」が22カ国で出版され、200万部以上の売り上げを記録した、韓国トップの人気作家です。そういう彼女が盗作問題で当分の間、自粛することになり、それでなくても元気のない韓国の文壇、ますます元気がなくなるのではないかと心配です。

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