慶尚南道が給食費全面免除の中断を発表し、給食のあり方を問う論争が巻き起こっています。
韓国では2007年に慶尚南道居昌郡が給食費免除を実施したのを機にその他の自治体でも徐々に給食費免除が拡大し、現在は全国的にほどんどの小中学校で児童生徒全員の給食費が免除されています。ところが、今月1日から慶尚南道全域で給食費免除を中断することが決定しました。それに伴い、父兄の炊き出しを実施する学校や、抗議の意味で生徒たちのほとんどが登校拒否をしてしまった学校など、各学校で重大な問題が発生しています。
慶尚南道では給食費免除の中断をめぐり、道と教育庁が対立を深めています。中断となったのは、道がこれまで無償給食に割り当てていた予算を財政念のため削減すると決定したためでした。ホン・ジュンピョ慶尚南道知事は与党側の人物として知られており、今回のように右派がハンドリングして給食費免除の中断に乗り出すというのは、2011年にオ・セフン元ソウル市長が給食費免除の実施を限定的に行うと主張したことにより市長を退くことになった一件を思い起こさせます。これに対し、ホン・ジュンピョ慶南教育監(韓国進歩連帯)は給食費免除の再開を求めており、こうした政党争いに子どもたちが巻き込まれているとも指摘されています。
また、一方で、ソウル市でも給食費をめぐるトラブルが発生し、ニュースなどでも取り上げられる問題に発展しています。ソウル市では現在、給食費は小中学校では全面免除、高校では父兄の所得に応じて免除されています。したがって、恩平区にある私立沖岩高校も一部の生徒のみ免除となっているのですが、給食費が免除されていないにも関わらず父兄が滞納している生徒たちに対し、教頭が食堂前で公に注意をしたと報じられました。これについては教育部も、「給食費が未納であっても生徒たちに督促しないようにとの方針を各学校に伝えている」と、沖岩高校教頭の行為には否定的な見方を示しており、後日、同教頭は正式に謝罪をしています。
給食費免除中断が発表された地域の父兄からは「最低でも義務教育の間は学校で食べる給食は公的に保証されるべき」との意見が圧倒的ですが、給食費全面免除自体については反対意見も多く聞かれます。「支援が必要な家庭に限って免除すればいい」「子どもたちの食事を保証するのは親の義務」といった意見です。学校で提供される給食は自治体の裁量に任されているため、今後も全面免除を中断する自治体が出てくる可能性もあり、学校給食のあり方自体が再検討されることになりそうです。