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文化

誕生100周年を迎えた韓国の画家、朴寿根

2014-02-04

日本による植民地時代に生まれ、祖国の解放と韓国戦争など激動の時代を生きた画家、朴寿根(パク・スグン)。貧しかった当時の韓国を温かい視線でみつめ、素朴な庶民の姿をもっとも韓国的で、また、独自の画風で描き出した画家として評価されています。

韓国近代美術を代表する朴寿根は、また、韓国人にもっとも愛される画家の一人です。今年は彼の誕生からちょうど100年目にあたる年です。1月17日から、ソウル鐘路区(チョンノグ)のガナ仁寺(インサ)アートセンターでは、「朴寿根生誕100周年記念展」が開かれています。朴寿根の作品はその価値が高く、今回展示された作品の価格を合わせると、1000億ウォン、ざっと93億円を超えます。



朴寿根の作品には市場の風景、洗濯場の女性たち、油を売る商人、赤ちゃんを背負った少女など、当時の韓国の庶民生活が溶け込んでいます。また、色あせた写真を想わせる色使いや何度も重ね塗りをして花崗岩のような質感を活かすフロッタージュ技法を通して素朴で温もりが感じられる日常を表現しています。

朴寿根の人生を振り返ってみると、韓国を代表する画家という修飾語をのぞけば飾り気のない自分の作品のように、妻を手伝い、子守りをする平凡な韓国の男性でした。画家、朴寿根の家族思いは、水彩画などの作品からも垣間見ることができます。妻のものと思われる白いゴムの履物、高校生だった娘の紫色のカバン、食卓にのぼっていたハタハタなどが描かれているのです。



朴寿根の作品に登場する人物は表情がはっきりしていません。目や鼻、口が描かれていない場合がほとんどです。表情がないにもかかわらず、温もりが感じられるのは、朴寿根独自の画風と、絵の中の人物がいる周りの空間、つまり背景が作り出す効果だといえます。たとえば田舎の井戸端、市場、野原で山菜を摘んでいる姿などが親近感をおぼえさせ、韓国人なら誰もが共感できる連帯感を作り出しているのです。

朴寿根は、1914年、韓国の東部、江原道(カンウォンド)楊口郡(ヤンググン)で生まれました。朴寿根が7歳の時、父親の事業の失敗で家が傾き、彼は小学校しか卒業できませんでした。しかし、朴寿根はさまざまな壁を乗り越え、独学で自分だけの美術世界を完成させたのです。18歳の時、「朝鮮美術展覧会」に出品した「春が来る」が入選、画家としてデビューすることができました。



画家になった朴寿根の目に映ったのは、市場でものを売る中年の女性や赤ちゃんを背負った少女の姿など、平凡な人たちの姿でした。こうした姿は貧しさの象徴ともいえますが、朴寿根はこうした姿に絶望よりは希望を見いだしました。

朴寿根の作品には貧しい時代を生き抜いた韓国人の温もりとたくましさが映し出されています。誕生100周年を迎えた、彼の作品が、今も韓国人に愛されているのは芸術的な価値はもちろん、その中に溶け込んでいる素朴な人情と希望があるからではないでしょうか。

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