「非常戒厳」を宣言した韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が4日、憲法裁判所に罷免を言い渡されて失職しました。
韓国の大統領が罷免されたのは、2017年の朴槿恵(パク・クネ)元大統領以来、2人目となります。
憲法裁判所は4日午前、尹大統領の弾劾審判を行い、裁判官8人の全員一致で弾劾は妥当だとする決定を言い渡しました。
宣告を行った文炯培(ムン・ヒョンベ)憲法裁所長権限代行は、「憲法で定める国家の危機的状況ではないのに、尹大統領が違法に戒厳を宣言した」と指摘したうえで、「これは、国民の信任に背くもので、容認できない重大な法律違反だった」と罷免の理由を述べました。
尹大統領は、野党が圧勝した去年の総選挙を不正選挙と主張し、選挙管理委員会に対する捜査を「非常戒厳」の根拠のひとつとして提示していましたが、これについて憲法裁判所は「単なる疑惑に過ぎず、国家の危機的状況には当たらない」として、憲法で定める「非常戒厳」宣言の要件を満たしていないと判断しました。
韓国の憲法では、戦時などに準ずる国家の非常事態に大統領が戒厳を宣言できると定めています。
また、尹大統領側が戒厳について、「野党の暴挙を国民に知らせるための『警告』だった」と反論したことに対し、「野党との対立は政治的な方法で解決すべきだった」と指摘し、野党が政治情勢を主導する状況を「非常戒厳」宣言の要件として認めることはできないと述べました。
さらに、実質的に軍隊を動員し、国会を掌握しようとする試みがなされたことから、警告を目的とした戒厳令とみなすことはできず、戒厳解除権を持つ国会の権限を著しく阻害するものだと述べました。
特に、「非常戒厳」を宣言する前に開かれた国務会議で、国務委員の署名なしで一方的に宣言が行われたことについても、戒厳の手続きとしても違法に当たると説明しました。
憲法裁判所は、弾劾訴追の理由とされた▲戒厳令宣言の違法性▲戒厳令による国会の政治活動の禁止▲軍と警察の投入による国会の権限の妨害や議員の逮捕命令などを全て認め、大統領の罷免に値する重大な違憲・違法行為があったと判断しました。
国会では、尹大統領による「非常戒厳」の宣言が違憲・違法だとして、尹大統領の弾劾を求める議案の採決が行われ、国会議員300人全員が出席し、賛成204票で議案が可決しました。
尹大統領の弾劾審判は、去年12月14日、尹大統領が弾劾訴追されてから111日、最終弁論が終わった2月25日から38日で宣告が行われました。
尹大統領の罷免を受け、今後、公職選挙法に基づき、60日以内に大統領選挙が行われることになります。