大統領の権限を代行する韓悳洙(ハン・ドクス)国務総理は29日、閣議を開き、野党の主導で国会を通過した憲法裁判所法の改正案に対し、拒否権を行使しました。
改正案には、大統領が指名する憲法裁判官の候補者を権限代行が指名できないよう定める内容が盛り込まれています。
憲法裁判所の裁判官は大統領、国会、最高裁判所に当たる大法院長がそれぞれ3人ずつ指名し、合わせて9人で構成されますが、韓国務総理は8日、国民向けの発表で、18日に退任した憲法裁判官2人の後任を指名しました。
しかし、憲法裁判所は、「大統領の権限を代行する国務総理が、憲法裁判官の指名権を行使できると断定することはできない」として、裁判官指名の手続きを停止することを決めました。
こうしたことを受け、野党の主導で憲法裁判所法の改正案が国会を通過しましたが、これに対して拒否権を行使したものです。
韓国務総理が拒否権を行使するのは、今回が8回目で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権全体では42回目です。
韓国務総理は、改正案について「大統領代行の権限を制限するのは憲法に反するものであり、三権分立にも反するおそれが大きい」と明らかにしました。
また、「国会や大法院長が指名する憲法裁判官は、選出または指名から7日後に自動で任命される」という条項についても、大統領の任命権を形骸化するものだと批判しました。
そのほか、後任が就任するまで裁判官の任期が自動で延長となる条項も、憲法の精神に反すると指摘しました。
一方、この日の閣議で韓国務総理は、アメリカとの通商分野における協議については、「原則的な合意を通じて不確実性はかなり解消された」としながらも、「相互関税の停止期限の7月までは多くの障害を乗り越えなければならない」と述べました。
また、国会に対して、通商協議と補正予算案の処理における協力を呼びかけました。
韓国務総理は来月1日に辞任し、大統領選挙に出馬するものとみられていることから、今回が、韓国務総理が主催する最後の閣議だろうという見方が出ています。