政府が、韓国国民による北韓への個別観光を認める方策を検討していることがわかりました。
南北間ではかつて、1998年から2008年までの10年間、北韓の金剛山(クムガンサン)と開城(ケソン)への観光プログラムが運営されていましたが、2008年、金剛山を訪れた韓国人観光客が北韓軍により射殺された事件を受けて、韓国国民の北韓への団体観光は全面的に中断されました。
その後、文在寅(ムン・ジェイン)政権下で個別観光の推進が公式化されましたが、新型コロナウイルスなどの影響で実現には至りませんでした。
こうしたなか、10日、李在明(イ・ジェミョン)大統領の就任後、初めて開かれた国家安全保障会議で、関連の内容が検討されたということです。
大統領室は21日、「政府は韓半島の緊張緩和と南北関係の改善を目指して対北韓政策を策定・推進している」と明らかにしました。
これは北韓が最近、北韓南東部の江原道(カンウォンド)にある元山(ウォンサン)葛麻(カルマ)観光地区を開放し、観光事業に積極的に乗り出している動きを活用しようとする試みと見られています。
従来の北韓への観光は、旅行会社が事前に旅行代金を徴収し、北韓側に一括で支払う団体観光の形式で行われてきました。
団体観光は、北韓への「大量の現金の移転」を禁じた国連安全保障理事会の対北韓制裁に抵触する可能性がありますが、政府は、個人が北韓を訪問して現地で支払う費用はこれに当たらないと判断しています。
ただ、北韓は2023年末から南北間を「敵対的二国関係」と位置づけているうえ、アメリカとの協議や韓国国民の安全対策など、解決すべき課題も少なくありません。
こうしたなか、国家情報院が数十年にわたり運営してきた北韓向けの短波ラジオ放送とテレビ放送を、今月に入ってすべて中断したことが明らかになりました。
これも政府による相次ぐ対北韓融和措置とみられていますが、一方で、北韓住民が外部情報に接する手段を政府自らが遮断したとの批判も出ています。