パク・チャヌク監督作
2024-06-05
韓国の街では交番を見かけることがあまりありません。住宅街でも繁華街でもパトカーは巡回していますが、急に困ったことが起きた時に駆け込む交番は見当たりません。そんなとき人々は24時間、あるいは夜遅くまで電気のついているコンビニに向かうようです。
デート暴力にあっていた外国人女性が助けを求めたり、幼い兄弟が夜遅くに訪れおかしいと思った店主の機知で幼児虐待が明るみにでたこともありました。CUは2017年から迷子や認知症のお年寄りなどを警察や家族に連絡してあげる行方不明予防システム「アイCU」を導入しています。さらに去年からは全国の店舗に「虐待児童通報システム」も導入しました。これは各店舗で虐待が疑われる児童を見つけたらレジの端末機を通して警察に通報できるシステムです。
同様にGS25は去年10月から全国3千の店舗で、セブンイレブンは去年11月から全国8100の店舗でそれぞれ児童安全保護システムを導入、迷子や虐待が疑われる子供たちがいたら警察に通報するようになりました。
一方でコンビニは韓国社会の縮小版だとも言えます。コンビニの店主で作家でもあるボン・ダルホさんが朝鮮日報に書いた、コンビニを訪れる人の風景です。
午前6時 アメリカーノ2杯
スターバックスのアメリカーノの国内販売量は年間1億杯。コンビニ大手3社のコンビニコーヒーの年間販売量は合計4億杯。新型コロナの影響もあり最近ではコンビニのコーヒーの売上が倍増している。
そんなコンビニのアメリカーノを毎回、必ず2杯注文する人がいる。ビルの警備員をしているチェさんだ。1杯は自分用、そして残りの1杯は「どうぞ」とレジのコンビニ店主に差し出していく。1+1の飲料水を買って黙って1本はそのまま置いていくお客もいる。コンビニ店主への思いやりの1杯だ。
午前10時30分 社内の秘密カップル
コンビニには2+1の飲料水や菓子がある。2本買うとおまけで1本ついてきて、この1本、すぐに必要なければ、数日後にもらったり、あるいは自宅近くの同じ系列の店舗でもらえたりもする。スマートフォンのアプリを活用するサービスだ。
午前8時、男性客が2+1のチョコ牛乳を買い、1個はキープしてコンビニに置いていく。そして午前10時30分、女性客がやってきてこのキープしたチョコ牛乳をもらっていく。これが何度も続けば、社内の秘密カップルだ。
午後4時50分 ジュン君
客の中にも必ず挨拶を返してくれる人もいれば、ぶすっとした不愛想な人もいる。
ジュン君は、コンビニに入ってくると一番先にカウンターの前に来て「アンニョンハセヨ」と挨拶してくれる。幼稚園の帰りにほとんど毎日コンビニを訪れるジュン君、後でわかったことだが、ジュン君のパパもいつも気持ちよく挨拶を返してくれるお客さんだった。
午後6時5分 小説宅配のお嬢さん
コンビニのサービスには「半値の宅配」というサービスがある。一般の宅配会社を利用するのではなく、コンビニの物流網を利用してこちらのコンビニから、宛先のコンビニに荷物を送るシステムだ。宅配会社の半分の値段で、でも日にちは宅配会社よりは1,2日遅くなる。
いつも会社の帰りにやってきて「宅配届いてます」とたずねる若い女性がいる。彼女の荷物はいつもインターネット書店から届く新刊の小説だった。新型コロナで在宅勤務中なのだろうか、彼女宛の宅配も来なくなってしまった。
コンビニはまさに韓国社会の断面図のようです。24時間灯っているその灯りに惹かれて今日もたくさんの人々がコンビニにやってきます。伝統市場の代わりに、今はコンビニに人々の人情が行きかっているようです。
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