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文化

ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したキム・ギドク監督の映画「ピエタ」

2012-09-18



9月9日の明け方、イタリアのベネチアからうれしい知らせが届きました。この日開かれた第69回ベネチア国際映画祭の授賞式でキム・ギドク監督の韓国映画「ピエタ」が最高賞の金獅子賞に選ばれたのです。

ベネチア映画祭はカンヌ、ベルリン映画祭とともに世界3大映画祭に数えられています。そのベネチア映画祭で韓国映画は徐々に、しかし確実にその高い作品性が認められてきました。1987年、イム・グォンテク監督の映画「シバジ」で女優のカン・スヨンが主演女優賞を獲得し、2002年にはイ・チャンドン監督の映画「オアシス」が監督賞と新人俳優賞などを受賞しました。しかし、韓国映画は2005年、パク・チャヌク監督の映画「親切なクムジャさん」以後、毎年、映画祭には招待されてものの、公式コンペ部門には進出できませんでした。キム・ギドク監督の「ピエタ」は7年ぶりにコンペ部門に進出した作品で、100年あまりになる韓国の映画史上初めて、ベネチア映画祭の最高賞、金獅子賞を受賞したのです。

1996年、「ワニ」という作品で映画監督としてデビューしたキム・ギドク監督。他人に見られたくない人間の欲望を赤裸々に描き出した彼の作品は、数々の国際映画祭に招待され、その作品性を認められてきました。今年、ベネチア国際映画祭に4回目の招待を受けたキム・ギドク監督は彼の18本めの映画「ピエタ」で最高賞、金獅子賞に輝いたのです。



「哀れみたまえ」という意味がある「ピエタ」。キム・ギドク監督の映画「ピエタ」は、キリストとその死を嘆く聖母マリアの姿を描写した彫刻家ミケランジェロ初期の傑作「ピエタ」をモチーフにしています。極端にまで行きついてしまった資本主義について問いかけ、家族、復讐の意味、お金によって破壊されていく人間性を描き出した、お金中心の現代社会の抱える問題を訴えた映画でした。

「ピエタ」にはこれまでのキム・ギドク監督の作品と同じように人間の欲望と暴力性、人生の矛盾が描き出されています。残酷なシーンも多いのですが、その奥には救いのメッセージ込められています。救いという言葉には宗教的な色がありますが、キム・ギドク監督が言いたい救いは現実世界での救い、つまり、互いに尊重し、互いを信じること、そして劣等感に押し潰される敗北者が少なくなる社会なのだそうです。

映画を専攻したわけでもなく、観客に受ける作品、つまり利益のための映画を作ろうとしないキム・ギドク監督。韓国の映画界ではそんな彼をアウトサイダーと呼んできました。しかし、妥協を知らないキム・ギドク監督は隠したい社会の恥部と傷を掴み出し、映画を通して訴えかけ黙々と救いのメッセージを伝え続けているのです。

ベネチア映画祭での金獅子賞受賞をきっかけに世界に認められ、より大きな舞台に向かってはばたき始めた韓国映画。数々の映画祭でその作品性を認められてきただけに今後、第2、第3のキム・ギドク監督の誕生が期待されています。

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