ドラムの演奏やタップダンスなど、いろんなジャンルのパフォーマンスが披露される舞台。しかし、ここは一般のコンサート会場ではありません。この日の舞台は「不況時代の教育問題」に関する講演会でした。文化芸術と、セミナーや講義が一体となった新しいスタイルの講演会、これが韓国で今トレンドとなっている「講演コンサート」です。

これまで講演会というと、舞台の講演者の話を聴衆が聞く、という退屈なパターンが当たり前でした。でも、最近の講演会は、文化芸術を積極的に取り入れたコンサートスタイルがトレンドとなっています。講義の合間に愉快なパフォーマンスを披露したり、多数の講演者が登場してトークを交えたりして堅苦しい雰囲気をがらりと変えて、活気を吹き込みます。

このようなトークやコンサートを交えた講演会が世界的に広まるのに大きな役割を果たしたのは、世界的な動画講演プログラム、TED(テッド)です。1984年に設立されたTED(テッド)はアメリカの非営利財団で、「広める価値のあるアイデア」というコンセプトで、世界中の著名人を招いた講演会を開いています。TED(テッド)が世界的に注目された理由は世界最高峰の講演会をオンラインで、しかも無料で公開したところにあります。講演者と聴衆、そして世界のネットユーザーが共有するTED(テッド)の講演会は韓国の講演会にも影響をおよぼし、大きな変化をもたらしました。中でも、コンサート形式を取り入れたカジュアルな雰囲気の講演会が注目され、今ではトークコンサート、知識コンサートというタイトルの講演会が多くなっています。いろんなジャンルが融合して、多様化したニーズに応えながら進化しているのです。

コンサートスタイルが講演会開催でのトレンドとなってから、テレビ番組にもさまざまなスタイルの講演番組が登場しています。講演者の人生を一方的に紹介するのではなく、視聴者と登場人物の間のコミュニケーションに焦点を合わせた番組です。面白いエピソードを交えたトークショーのような講演番組も人気があります。

笑いの中に教育的なメッセージを伝えることは、ある意味、とても難しいことかも知れません。しかし、面白いエピソードといっしょに人生を語ったり、堅いテーマの講義に華麗なパフォーマンスを織り込んだりして、そんな中で人生の道標となるメッセージや情報を溶け込ませることができるのがトークコンサートや知識コンサートの特徴だといえます。

現代社会は未来が不確かな社会だといいます。多くの人がこうした未来に不安を抱いていて、その悩みを解決するためにも専門家とのコミュニケーションを願っています。でも退屈なばかりの講義では効果は半減してしまいます。共感とともに意思の疎通を願う現代の人たちにぴったりの講演会、それが講演コンサートなのです。