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文化

韓国戦争の休戦60周年の意味と南北問題について考えるミュージカル「女神さまが見てる」

2013-03-19



3月10日、ソウルの忠武(チュンム)アートホールでスタートしたミュージカル「女神さまが見てる」は、韓国戦争のさなか、無人島に流れ着いた韓国軍と北韓軍、6人の軍人の話を感動的に描いた作品です。

1950年6月25日に勃発した韓国戦争。その砲声がなり止んだのは、今からちょうど60年前に締結された休戦協定によってでした。1953年7月27日、板門店に集まった国連軍と北韓、中国軍の間で休戦協定が結ばれ、3年間に及んだ韓国戦争は休戦しました。しかし、その後も西海岸沖での戦闘をはじめ、韓国の哨戒艦「天安(チョナン)号」事件、延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件など北韓は220回あまりにわたって休戦協定に違反する行動を取り、韓半島の戦争が終わったのではないということを実感することができます。ミュージカル「女神さまが見てる」は休戦60周年を記念し、韓半島に本当の平和が訪れることを願う気持ちが込められた公演です。

時代は6.25韓国戦争のさなか。4人の北韓兵士と2人の韓国兵士を乗せた船が強い雨と風にさらされます。やっとのことで無人島に流れ着いた船は使い物になりません。無人島を出るには船を直すしかないのですが、6人のうち唯一、船を直すことができる北韓兵士は戦争中に兄を亡くし、そのショックで気が触れ、正常な状態ではありませんでした。その兵士をなだめ、船を直すために、敵と味方に分かれていた残りの軍人が女神さまという架空の人物を仕立てあげよう、というアイデアを出すのです。北韓兵士も韓国兵士も船を直すために罪のない嘘をつきます。女神さまが見ているから仲よくしなければならない、そして、力を合わせて船を直し島を出よう、と言うのです。「無人島での孤立」という極限の状況では敵と味方の区別は無意味です。最初は島を抜け出すための芝居でしたが、その過程で互いの話に耳を傾け、互いの傷を見つめ、最後には人と人として理解し合うことができるのです。



戦争は対立する両国に忘れられない傷を残します。互いを敵視し、互いを恐れ、警戒するために暴力を使うしかないのです。しかし、こうした価値観を越えた存在が入り込むと本当の人間性が見えてきます。ミュージカル「女神さまが見てる」では無人島に取り残された6人の兵士が生き延びるために力を合わせるしかなく、そんな中に女神さまという存在が割り込むことで、思想の違いを乗り越えて一つになることができます。女神さまを喜ばせるための芝居を通じて実際に理想的な共同体を作っていく過程を描いています。

そんなある日、遠い海に韓国軍の偵察船が姿を現わします。その瞬間、それまでの信頼関係は崩れ、無人島にいた6人の兵士たちは互いに銃を向け合い対立します。そして、その瞬間、戦争で兄を失った傷で気が触れた北韓兵士の目の前に女神さまが現れます。女神さまから変わった姿を見せてほしい、というお告げを受け、自分を取り戻した北韓の兵士は残りの5人を説得してまず韓国軍の偵察船を遠退けます。そして、その短い時間を利用してお互いの無事を祈りながら別れるのです。その後、北韓兵士たちが無事に帰国したのか、あるいは韓国軍に捕らえられたのか、その後の話は観客にまかせたまま、公演は終わります。韓半島の戦争が休戦状態のまま60年が経ったのと同じように、ミュージカル「女神さまが見てる」の結末もはっきりしないままになっているのです。

韓国戦争の休戦協定が結ばれて60年がたち、戦争の悲劇をおぼえている世代も段々少なくなっています。そんな中、ミュージカル「女神さまが見てる」をはじめとするさまざまな公演は、戦争を知らない世代に、思想の違いや葛藤よりは愛と和合というメッセージを通じて平和の価値を説いています。

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