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文化

アニメーションに生まれ変わった近代韓国の短編小説

2014-09-09

8月6日、ソウルの都心、鐘路(チョンノ)区にある独立映画専用館で、規模は小さいけれど、大きな意味を持つアニメ映画の試写会が開かれました。この日、1920年代から30年代にかけて書かれた、李孝石(イ・ヒョソク)、金裕貞(キム・ユジョン)、玄鎮健(ヒョン・ジンゴン)など、近代韓国を代表する3人の作家の短編小説を30分ずつ、合わせて90分の1本のアニメ映画にした「ソバの花、運の良い日、そして春々」が公開されました。

最近、国語の教科書に載せられる韓国の近代文学作品の数が減ってきています。教科書に載っていないと、子どもたちが韓国の近代文学に触れる機会はそれだけ少なくなります。美しい韓国の文学作品が子どもたちから忘れられてしまう前に、アニメで紹介するための企画です。



現在、韓国のアニメは、素材の面でも人気の面でも低迷期に入っている状態です。そんな中、放送局と大手の出版社がスポンサーとなって企画した「ソバの花、運の良い日、そして春々」のプロジェクトは、韓国のアニメ界にとっても良い刺激になり、新しい素材の発掘につながります。文学作品をアニメ化する今回のプロジェクトは、本を読まなくなった青少年たちだけではなく、古典の面白さを忘れて生きている大人たちにもおすすめのイベントです。アニメは、小説ならではの美しい想像の世界を表現することができます。こうした幻想的な、あるいは童話的な映像が、原作となった小説を読みたいと思うきっかけになるのです。

1936年に発表された李孝石の作品「ソバの花が咲く頃」は、作者の故郷である韓国の東部、江原道(カンウォンド)平昌(ピョンチャン)郡蓬坪(ポンピョン)が背景となっている短編小説です。「ソバの花が咲く頃」は蓬坪で開かれる市にきた行商人にまつわるエピソードが中心となる小説です。主人公は次の市へ向かう道中、白いソバの花が満開した風景を見ながら、誰にも言ったことのない思い出話を口に出します。若かったころの恋をフッと思い出させるような、美しく、しかも懐かしい風情をアニメで表現するのが難しかったのだそうです。
この他、婿養子と舅の葛藤を面白おかしく描き出した金裕貞の小説「春々」や日本による植民地時代、下町に生きる人たちの暮らしを描いた玄鎮健の小説「運の良い日」などもアニメ化され、紹介されています。「運の良い日」は、他の二つの作品とは違って多少重い内容ですが、アニメ化されているため、子どもたちにも分かりやすいようです。



アニメーションに生まれ変わった韓国の近代文学は、教科書に載っている古典、あるいは触れる機会の少ない文学作品という先入観をなくし、誰もが楽しめる作品としてアピールしています。こうした努力が、低迷している韓国のアニメ界に活気を吹き込み、本を読まなくなった人たちの興味を掻き立て、韓国文学が愛されるきっかけになるのではないでしょうか。

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