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文化

ソウル市立美術館で開かれているビエンナーレ「メディアシティソウル」

2014-09-23

ソウル市庁に面している朝鮮時代の王宮、徳寿宮(トクスグン)。デートコースとしても人気の徳寿宮の外側の石垣道に沿って200メートルほど歩いていくと、左手に小さな森が見えてきます。この森を入っていくと、ソウル市立美術館の西小門(ソソムン)本館が現れます。

今、ソウル市立美術館の西小門本館ではセマ・ビエンナーレ「メディアシティ・ソウル」が開かれています。セマ(SeMA)とは「Seoul Museum of Art」、ソウル市立美術館の頭文字で、ビエンナーレとは2年に1回開かれる美術展覧会のことです。つまり、セマ・ビエンナーレは、ソウル市立美術館で2年に1度開かれる美術展覧会で、この展覧会のタイトルが「メディアシティソウル」なのです。2000年にスタートし、今年で8回目を迎えた「メディアシティソウル」は、韓国でもっとも速く変化しているソウルの姿をメディアアート、つまり映像作品を通して紹介するために企画されました。

メディアシティソウルの今年のテーマは、「アジア」です。韓国、ソウルにとどまらず、アジアの文化、伝統、歴史にフォーカスを置いた企画で、地理的にはもちろん、宗教や歴史など全般にかけて多くの共通点を持ち、特に、近現代に入ってからは、植民地支配や冷戦など、長期にわたって歴史を共有してきたアジアの歴史に注目しています。メディアシティソウルは、「お化け、スパイ、おばあさん」という3つのキーワードでアジアの国々共有の歴史を紹介しています。



第1キーワードのお化けは、歴史に関する展示です。歴史といっても教科書に出ている歴史ではなく、忘れられてしまったたり、あまり知られていなかったりする歴史のことで、こうした歴史をすべて知っている存在は、おそらく人間ではなく、お化けだろうということから「お化け」というキーワードが生まれました。私たちが何を欲し、何を忘れて生きてきたかを顧みる作品が展示されています。第2キーワードのスパイは、アジアが経験した冷戦、韓国では今なお続いている冷戦を象徴しています。最後のキーワードのおばあさんは、お化けとスパイの時代を生き抜いた女性たちの生涯と、彼女たちが築いてきた文化について紹介しています。

美術館1階には、消えていく共産主義を映像で表現した作品「幽霊と領域」や鈴がたくさんついている木を通して巫女と鈴を表した「音のする満月」、また、1920年代の京城(ケイジョウ)裁判所だった空間をそのまま再現した日本人アーティストの作品など、印象的な作品が展示されています。暗い森から見上げた夜空と大きな満月を描いた絵画作品「乾坤失色日月無光」は、天地が色を失い、月日が光を失った状態を通して毎日のように大きな災難に見舞われている現代のアジアを表現しています。



2階の展示室では、アジアの宗教を中心とする作品が展示しています。今ではほとんど忘れられてしまった韓国の民間信仰、巫俗(ムソク)信仰を記録した写真をはじめ、チベット仏教の世界を垣間見ることができる聖地巡礼のビデオ作品など、アジアの宗教について知ることができます。おばあさんの歌や昔話など、懐かしいおばあさんの声が聞こえてくる「おばあさんラウンジ」、韓国の済州島(チェジュド)に滞在しながら時間をかけて制作した作品「海女」などは、「おばあさん」というキーワードを代表する作品です。この他にも、「スパイ」というキーワードを代表する作品として北韓がアフリカの独裁国家に建てた建築物や銅像などを取材したドキュメンタリーをはじめ、さまざまな作品が展示されています。

「お化け、スパイ、おばあさん」というキーワードのもとでアジア共通の文化や歴史を紹介しているセマ・ビエンナーレ「メディアシティソウル」は、近くても、時には遠く感じられるアジアの国々が一つの共同体であることを確かめるきっかけになるのかも知れません。

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