小説『愛のあとにくるもの』
2024-05-15
昔々、ある村に父と母、兄と弟の一家4人の家族が住んでおりました。
弟は欲張りで、小さい頃から兄の分にまで欲を出して、ほしがりました。
兄はしんな弟を可愛がり、大事にしました。
そんなある日、思いがけない事故で両親が亡くなってしまいました。
時が流れ、兄弟は成長しました。
しかし、弟は相変わらず欲張りでわがままでした。
ある日、兄弟はいっしょに峠を越えて近くの村に物乞いにいくことになりました。
峠を下りていくと、分かれ道が出てきました。
左へ行くと「瓦屋根の村」、右へ行くと「藁ぶき屋根の村」です。
「ボクが瓦屋根の村の方へ行くから兄さんはあっちの村に行ったらどうかな?」
「そうしよう」
ところが、貧しいはずの藁ぶき屋根の村ではにぎやかな宴会が開かれていました。
兄は久しぶりにお腹いっぱいになるまで食べ、
村人たちが包んでくれた食べ物を手に家に帰りました。
一方、瓦屋根の村へ向かった弟はお腹を空かせたまま帰ってきました。
数日が経ち、兄弟はまた物乞いをするために峠を越えました。
今度は弟が藁ぶき屋根の村へ、兄は瓦屋根の村へ行くことにしました。
しかし、弟はこの日もお腹を空かせたまま、とぼとぼと家に帰り、
兄はおいしいものをたくさんもらって帰ってきました。
お腹を空かせたまま手ぶらで帰ってきた弟は、
いつもおいしいものをたくさんもらって帰ってくる兄に腹が立ちました。
弟が腹いせに振り回した木の枝が兄の目に刺さってしまいました。
弟は自分のせいで片目を失った兄を家を出ました。
宛てもなく歩き続けた兄は、竹林の中に立っている空家を見つけました。
夜が更け、兄がうとうとしていた時、お化けのトッケビたちの声が聞こえてきました。
慌てて屋根裏に隠れた兄は、トッケビたちの話に耳を傾けました。
トッケビたちが帰ったのを確かめた兄が屋根裏から下りてきました。
「山の北の方にある泉の水で目を洗えば、再び見えるようになるということか。
両班の金の一人娘の病気は屋根に住み着いたムカデを鐵の箸で捕まえて、
エゴマの油で揚げれば治り、
村の老木が枯れる理由は地中の金の塊が水の流れを遮っているからだったのか」
トッケビ屋敷で耳にした秘密のおかげで、兄は目が見えるようになり、
美しい妻と結婚し、裕福に暮らせるようになりましたが、
いつも弟のことが心配でした。
兄は妻といっしょに弟のいる家に帰っていくことにしました。
弟の暮らしぶりは目も当てられないほどでした。
兄は妻といっしょに弟の世話をし、弟は涙を流しながら許しを乞いました。
そんな弟を許した兄は、貧しい頃を忘れず、
困った人たちを助けながら幸せに暮らした、とさ。
2024-05-15
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