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文化

「ソウゼソリ」ほか

#国楽の世界へ l 2023-08-08

国楽の世界へ

「ソウゼソリ」ほか
宗教という観点からみると、祭祀グッは、仏教の礼仏やキリスト教の礼拝のように、巫女ムーダンが主管する宗教儀式といえます。最近はムーダンというと、占いをする人と考えがちですが、本来ムーダンはグッを主管するために専門的な訓練を受けた人です。グッを行うとき、ムーダンは歌と踊りで神を喜ばせます。共に参加する人々が楽しんでくれてこそ、神も喜ぶと考えました。そのため、グッは、多くの人が共に合わさって遊ぶ機会でもあったのです。今日の最初は、済州島(ゼチュト)でグッを行うとき歌っていた巫女の歌です。

この曲は、もともと「ヨンドゥングッ」という祭祀を行うとき歌うものだったそうです。ヨンドゥングッとは、陰暦の2月、海女が風の神、ヨンドゥン神を迎えるとき、そして、送り出すとき行う儀式です。ヨンドゥン神は島を回り、海にワカメ、アワビ、サザエなど、海女が採取する海産物の種をまくとされました。海女はグッを行う巫女の歌を真似て歌い、自ずと「ソウゼソリ」も歌えるようになりました。歌いやすいリズムで、海の仕事や畑仕事をするときも歌っていたので、そのうち民謡として定着しました。済州島のグッの歌には、「ボンプリ」といって、神の来歴を歌うものが多くあります。ボンプリをよく聴いてみると、天地創造から人が定着するまでのお話、あの世とこの世を行き来するお話など、多様な神のストーリーがあります。ギリシア・ローマの神話に劣らない、神話のシリーズといえます。済州島では、ムーダンのことをシムバンといいます。ボンプリは、シムバンが最初から最後までストーリーを歌う形ですが、グッの合間には神を楽しませる歌もありました。今度は、様々な鬼神を送り返す儀式という意味の、「プダシ」という曲です。有名な神からはじめ、あるゆる鬼神について歌います。恨みのない方が鬼神になることはなかったでしょう。「プダシ」で歌う鬼神には、大東亜戦争で亡くなった方もいたほどです。このように社会の悲しみにも共感するのが、グッの役割でもありました。

最近は、多くのミュージシャンが、済州島の巫女の音楽に関心を寄せています。今日は、中でも、チュダヘチャジスの音楽をご紹介いたします。済州のグッのうち、鳥を追い出すという意味の「セドリム」という曲をテーマにした音楽です。巫俗信仰において鳥は、空と人間を繋げる存在です。人間の世の中に大きな災いがあるとき、鳥が来て知らせてくれるといいます。ところが、人間の方からすると、鳥が来ると災いがあるので、鳥が災いを招くのだと思ったのです。鳥は韓国語で「セ」と言うのですが、正しくないという意味の「邪(じゃ)」という漢字を韓国で「サ」と発音することから、その発音が変わって鳥の「セ」になったというお話もあるほどです。祭祀では、鳥を追い払う厄払いをするときも、お腹が空いた鳥にはお米を与え、喉が渇いた鳥には水を与えました。巫俗信仰は、祝福を願う者は分け合うことが大事だとされてきたからです。

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